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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:名古屋のGKトレーニングはアイデア豊富

2022年3月29日(火)
普段はあまり注目されることのないGKトレーニングだが、名古屋のそれは何とも面白いメニューが目白押しだ。もちろん先に断っておくが、ベーシックなものは当然のごとくこなしているうえで、ユニークなものもまた多いという意味である。ランゲラックは以前、河野和正GKコーチについて「その時に課題としているプレーについての練習を、いつも用意してくれる」と厚い信頼感を口にしていたが、なるほどそういう意味でもここには豊富なメニューが揃っているのかもしれない。

3月24日に行われた公開練習では、写真のようなトレーニングを見ることができた。板に二つの取っ手がついた器具を手にするランゲラック。手前の方にはキッカーがおり、奥にはもう一人、そして写真向かって右側にはゴールとそれを守るGKがいる。見ていると、どうやらこれはクロスからのシュートに対するセービングの練習のようだった。なるほど、クロスに対するシュートをGKたちだけで精度高く行なうのはなかなかに困難だが、この器具を使えば比較的楽にボレーシュートが表現できる。この器具、見たところお手製であり、スタッフたちの苦労もそこには垣間見えた。





ただ、GKコーチの注文はシビアだった。「当てるだけでいい」。むしろ当てるだけで、守るGKの身体の近くに飛んでくるダイレクトシュートへの対処をしたいというのはトレーニングの主旨のようだ。故に当てすぎて良いコースに飛ぶと、「当てるだけでいい!」と檄(?)が飛び、板でシュートを打つ役の選手が首をひねって悔しがる。確かに練習のテーマを実現しようと思えばそういう反応にはなるのだが、少し冷静になって見直すとちょっと面白い光景だった。クロスを取っ手付きの板で跳ね返し、それをしっかり我慢して身体の面で止めるような練習。身体の近くというコースは反応しやすいようで反応しにくく、身体の使い方も想像以上に難しい。すごく良いトレーニングだと思うのだが、見た目はなかなかにシュールだ。





このほかにも名古屋のGKトレーニングにはテニスのラケットで打ったテニスボールを止める練習や、いわゆるシューティングボードに斜めから蹴り込まれた鋭い“疑似ボレーシュート”を止める練習など、コーチの創意工夫があふれたトレーニングが多い。だがサッカーのGKに向かってラケットを振る姿はやはりシュールで、良い練習だなと思っていてもニンマリしてしまう。でも考えてほしい。つい先日のリーグ第5節・柏戦で見せたランゲラックの好セーブは、こうした日々の練習の賜物でもあるのだ。彼自身の超人的な反応や積み重ねてきた経験、身体能力の高さもあるが、練習による洗練なくして試合での好パフォーマンスはない。あの数々のビッグセーブの陰には、実に多種多様なトレーニングによる鍛錬が折り重なっているのである。



重要なのは見た目ではなく、中身。見た目もイケメンでナイスガイなランゲラックはその点で少しズルいが、名古屋の守護神を生む作業には、こうした面白さもあるのだということをお伝えしておきたい。

Reported by 今井雄一朗