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【取材ノート:今治】今治の街は日々スタジアムが育つ

2022年3月30日(水)


2022シーズンの明治安田J3第2節。3年目のJリーグを戦うFC今治は、ホームのありがとうサービス.夢スタジアムでカターレ富山に2-1と競り勝ち、今季初勝利を挙げた。

記者席は北側のゴール裏最上段にあるのだが、目の前の席でホームチームを応援していた60代と思しき男性が立ち上がり、くるりとこちらに振り返って話しかけてきた。「勝ってよかった。しかもタカトラは地元の出身じゃし。去年なら、負けとったよ」。

開幕からホーム連戦となった今治は前節、福島ユナイテッドFCと接戦を演じながらPKによる1点で惜敗していた。富山戦はJ2、FC琉球から新加入の期待のアタッカー、中川風希のあざやかなループシュートで先制。追いつかれたものの、82分、今治出身のFW近藤高虎がCKのクリアボールをペナルティアーク内で拾って豪快に蹴り込み、これが決勝点となった。

ホームチームの快勝を見届けたサポーターたちは、もちろんみな笑顔でスタジアムを後にしていた。高台の上にある夢スタは、長い階段を下りて帰路につくことになるのだが、その視線の先には広く造成が進められ、4階建ての建物の鉄骨が組み上げられ始めた現場があった。来年1月に完成予定のサッカー専用球技場、里山スタジアムだ。

昨年11月に着工された新スタジアムは、ホームゲームのためだけに、そこに建つわけではない。スタジアム周辺には公園や散歩道が整備され、店舗や宿泊施設もスタジアムの機能として取り込む予定で、目指すのは365日、たくさんの人が集まってにぎわい、心も生活も豊かになっていく場所だ。

3月24日、工事の進み具合はおよそ20パーセントという里山スタジアムのメディア向け見学ツアーが行われた。まだまだ“ザ工事現場”な新スタジアム。だが、ひとたび敷地内に足を踏み入れると、思っていたよりもずっと気分が上がり、わくわくしてきた。

ゴール裏からバックスタンド側に回り、ピッチサイドを通ってメインスタンド側の4階建てクラブハウス(まだ鉄骨とコンクリートがむき出しの状態だが)に至るコースで、りんかい日産建設・四国通建特定建設工事共同企業体の現場代理人、菱野智之さんの案内による約40分のツアーとなった。

完成後の想像がかき立てられるのは、何といってもその臨場感である。固定の座席はコンクリート7段で、決して高く設えられているわけではないところに特徴がある。最前列で観戦するときの目線は、ピッチレベルといえそうなほどで、しかもサッカー専用スタジアムである。目の前で繰り広げられるプレーの迫力は、なかなか味わえるものではないだろう。

新スタジアムの観客席は6,000人分となる。だが、海事都市の今治らしく、コンテナを利用した「里山コンテナ」を活用することで、J1既定の15,000席まで増設可能だ。

メインスタンドは19メートルの大屋根が張りだし、スタンドを覆うことになる。ユニークなのはベンチが客席内に設けられるインスタンド方式が取られていること。まるでイングランドのプレミア仕様だ。ベンチワークをつぶさに見ることができるのも、なかなかの醍醐味といえよう。

19のスタジアムを視察して準備したという現場責任者の菱野さんは、建築工事が行われるすぐ隣でピッチの芝を育てられていくところに配慮したい考えだ。別の場所で育てた芝を運び入れてピッチを敷いていくビッグロール工法ではなく、里山スタジアムのピッチは予定地に種をまき、現場で育てていく。散水のための井戸も先日、整備した。

今後は工事に携わる作業員だけでなく、芝を育てるスタッフが現場に出入りすることになる。「芝についての知識を学ぶ必要もある」と菱野さん。このやり方でピッチを敷設するのは、建設費用を抑えるためでもある。

工事は着々と進んでいる。4月にはメインスタンド上に張り出す大屋根の鉄骨が組まれ始め、5月にはピッチに芝の種がまかれる予定だ。今シーズン、FC今治を応援しに夢スタに足を運べば、日々育っていく新スタジアムの様子に胸を躍らせることになる。

昨年11月に始まった工事の進捗率は約20パーセント。来年1月の完成を目指して順調だ。

現場責任者・菱野さんの丁寧な説明を受けながら、およそ40分の見学ツアーとなった。

いよいよピッチレベルへ。一段と気分も上がる!!

スタジアムの建設とピッチの育成がどちらも現場で行われることになる。

バックスタンドの法面(のりめん)。現在はまだ土が盛られただけの状態だが、ここに7段の固定席が設けられる。最前列に座ったときの視線の高さとピッチの近さを、ぜひ想像していただきたい!!

メインスタンドのクラブハウスは4階建て。1階がロッカールームとミックス、2階がクラブ事務所、3階がVIPルーム、そして4階が記者席となる。

Jリーグのスタジアムにはあまり見られない、インスタンド方式のベンチとなる。ベンチワークを間近に感じながらの観戦も、実に盛り上がりそう。

5月には、ふるさと納税の返礼品として岡田武史会長らと周るスタジアムツアーも予定されている。そのころには外壁工事も終わり、よりクラブハウスらしくなっているという。

Reported by 大中祐二