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【取材ノート:神戸】G大阪戦60分頃の決定機から見えた、ロティーナ監督の哲学

2022年5月12日(木)
AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループリーグを首位で通過したヴィッセル神戸は、その良い流れを明治安田生命J1リーグに繋げたかった。だが、明治安田J1第12節のガンバ大阪戦を0-2で落として4連敗。今シーズン初勝利は次節のサガン鳥栖戦以降に持ち越しとなった。

ただ、G大阪戦の戦い自体は悪くはなかった。シュート数を比較すれば、G大阪の21本に対して神戸は4本と圧倒的に攻め込まれているが、これは34分に菊池流帆が退場処分になったため、そういう戦いを選択したからであろう。

“そういう戦い方”というのは、相手の猛攻に耐えながら一発のチャンスをものにして勝つというゲームプランである。

菊池の退場に対して、ロティーナ監督は攻撃の汰木康也を下げて、守備の槙野智章を入れている。G大阪のFWパトリックへの対応が目的だが、同時に前半残り11分を守り切るというメッセージがあったとも考えられる。

そして後半からシステムを4-4-1から3-5-1に変更し、さらに守備の安定を図った。その上で54分に小林友希を投入して中央の守備をさらに強化し、同時にアンドレス イニエスタというスペシャルカードを切る。

試合後、ロティーナ監督は「イニエスタを投入してからはボールを持つ安定感が出て、相手ゴールに近づく形も作れた」と振り返っている。この言葉が示すように、百戦錬磨の戦術家は数的不利になったからといって引き分けを狙いに行ったわけではない。リスク管理を優先しながらも、あくまで勝点3を目指して段階的に策を講じていった。

その一つの結果として生まれたのが、60分頃に訪れた武藤嘉紀の決定機だ。イニエスタがドリブルで相手を引きつけ、一瞬のスキを突いて相手DFの間に走り込んだ武藤へ絶妙のスルーパスを供給。フリーの武藤が放ったシュートは相手GKに阻まれたものの、これが決まっていれば一気に流れが神戸に傾いていた可能性もある。


現状を把握し、段階的にテコを入れ、最終的には勝つか負けるかのシチュエーションにまで持っていったロティーナ監督の采配は、これから神戸が通るであろう成長のプロセスを見ているようだった。

Reported by 白井邦彦