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【取材ノート:清水】4年連続となったシーズン途中の監督交代。清水を愛する熱血指揮官が残したものとは

2022年6月10日(金)
第16節・柏戦に1-3で敗れて3連敗となった翌日の5月30日(月)、清水エスパルスは平岡宏章監督の契約解除を発表した。シーズン途中での監督交代が4年連続という異例の事態。なぜこのような結果が続いているのかという疑問は、簡単に答えが出るものではないが、単純に途中退任した監督が力不足だったという話でないことは確かだろう。

平岡監督にしても、一昨年と昨年は終盤に指揮を引き継ぎ、見事にチームを立て直す手腕を見せた。とくに昨年は降格の危機にあったチームを4戦無敗―最後は3年ぶりの3連勝に導き、クラブの危機を救ったことは忘れがたい功績だ。
今季は初めてシーズン当初から監督を務めることになったが、開幕前に多くの主力選手が負傷離脱したことが大きなハンディキャップとなった。とくに前線で起点となるチアゴ サンタナを欠いたことで、攻撃の構築に関してはプランの大幅修正が必要になった。
そのサンタナは4月中旬に実戦復帰したが、試合をこなしながらコンディションを上げていき、実質的に力を発揮し始めたのはリーグ戦で初先発した4月29日の広島戦あたりから。この試合でいきなり2得点を挙げたのはさすがだが、タイトな日程とケガ人の離脱や復帰が続く中で攻撃の連係を熟成させていくのは難しく、得点力不足の状況は続いた。
守備に関しては、ある程度安定感を確保していたが、結果が出ない日々が続くと徐々に綻びが生じていくのはサッカーではよく見られる悪循環。14節・名古屋戦からの3連敗では1試合平均2.67失点と綻びが拡大し、契約解除に至った。

こうした流れをどう見るかは人それぞれだろうが、平岡監督以下、スタッフ、選手たちはチーム力を積み上げていくために日々ハードワークを続けていたことは間違いない。平岡監督自身も、退任時のコメントで以下のように語っている。
「選手・スタッフは、ここまでシーズン当初に掲げた5つのマニフェスト、『無条件で全力を尽くす』『闘う集団となる』『競争しながら協調し合い、共創する』『献身性と一体感を持つ』『責任感を持ち、自立する』、この5つを常に実行してくれたことに感謝しています」

現時点で重要なことは、それによる積み上げがチームの地力向上につながっているかどうかだろう。筆者個人としては、清水ユースの監督時代から平岡さんと接する機会が多く、その誠実な人柄、サッカーに対する熱さ、困難からけっして逃げない男気などをよく理解している。今季の難しい舵取りの中でもそこは見せ続けていただけに、確実に積み上げができていることを信じたい。
また、そんな感情を抜きにしても、鈴木唯人をはじめ山原怜音、宮本航汰、立田悠悟、滝裕太など成長が感じられる選手は多く、その他の軸となる選手たちも個としての力はそれぞれ発揮していた。

6月7日にはゼ リカルド新監督の就任が発表された(清水公式サイトリリース)。「日本サッカー界において極めて伝統のあるクラブのユニフォームを守っていくということは、とても重要であり、大きな名誉です」と語るブラジル人監督が、どのようなスタイルで戦うのかは現時点ではわからない。ただ、長く結果を出せていない中でも少しずつ積み上げてきたチーム力をうまく引き出し、結果に昇華させていくという仕事は何よりも期待したいところだ。

Reported by 前島芳雄