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【取材ノート:大宮】三門雄大から、その次へ――薫陶を受けた市原吏音の思い

2022年7月28日(木)


三門雄大、J3今治へ完全移籍。おそらくはクラブ内外で驚きをもって伝えられたこの報に、アカデミーでも衝撃を受けている者はいた。特に、現在トップチームへ2種登録もされている市原吏音はそうだった。



今季開幕前の沖縄キャンプへ、3年生の小澤晴樹や阿部来誠と共に帯同した。アカデミーの選手にとっては、単なるトレーニングパートナーにとどまらず、将来有望な期待の選手として認められたという意味を持つ。そうした場へ2年生ながら参加した市原だったが、合流直後に負傷するアクシデント。そこへ、やはりコンディション面で別メニューだった三門が声を掛けた。ジョギングやストレッチなどを2人でこなす姿が見られた。

「ケガして2人で一緒にやってくれた時も優しく話しかけてくれたり、キャンプが終わってからも、トップに練習参加した時は話しかけてくれたり良く見てくださってたので、(移籍は)悲しいですね」

親子と言っては言い過ぎだが、それでも市原から見れば年齢は倍以上。自分の人生ほどのプロキャリアを持つ大先輩から、得るものは少なくなかったはずだ。

「沖縄キャンプでは、現地の方がもてなしてくれたことに対するコメントが素晴らしくて、そういうところは見習わなくてはいけないと思いました。軽くジョギングする時は自分がけっこう質問攻めでしたね。J1とJ2の違いとか、今シーズンをどう戦っていくのかを聞いたり、プロで生き残っていくための厳しさも少し教えてもらいました」

特に市原は、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグでは今シーズンここまで全試合にフル出場し、チーム最多の出場時間となっている。2年生ながらすでにチームの中心選手であることに疑いはなく、来年は最上級生として、チームをけん引する立場となることは間違いない。そうした点からも、三門から学ぶ点は大きかった。

「ミカさんは、プレーで引っ張るだけでなく、ピッチ外のところもすごくしっかりしている方でした。自分は(年代別)代表にも選んでもらっているので、ピッチ内だけじゃなくてピッチ外のところも他の選手の模範になるような、キャプテンになってもならなくてもそういう意識でやっていかなきゃいけないと思います」

同じチームで戦いたいという気持ちも強かっただろうが、それは叶わなかった。だが、三門の移籍でまた新しい気持ちも芽生えた。

「悲しいのは悲しいですけど、自分もそういう舞台へ行けば、同じチームでプレーするか対戦相手になるか、どちらでも一緒にプレーできると思う。それもモチベーションの1つとして、早く上へ行かなきゃ、と思いました」

三門自身にそうした意識があったかどうか、残念ながら移籍前に話を聞くことができずわからない。もしかしたら、そんな大層な思いはないと笑うかもしれない。だが、その背中を見た者へ、市原に限らず同様にトップチームに参加した若者たちへ、そのDNAはしっかりと受け継がれているように思える。そんな彼らがそれぞれの思いを胸に、やがてはトップチームの中心選手に育っていくことを期待したい。


Reported by 土地将靖