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【取材ノート:長野】「Grow Everyday」。シュタルフ長野は成長を止めない

2022年9月7日(水)
AC長野パルセイロは前節、アウェイでいわきFCに0-1と敗れた。勝点9差で追う首位との大一番を落とし、上位との差が開いた状況。それでもチームは着実に成長を遂げており、歩みを止めることはない。


いわきとの前回対戦は、ホームで0-4と大敗。これが今季唯一となるホームゲームでの黒星で、誰もが「借りを返そう」と意気込んでいた。前回はビルドアップを奪われて失点するシーンがあったが、今回も臆せずにビルドアップを敢行。相手を自陣に引き込み、手薄になった背後を突くのが狙いだった。


3分には藤森亮志がサイドバックの背後を取り、ペナルティエリア内にカットインして相手に倒されるも、ノーファウルの判定。さらに6分、ロングフィードに抜け出した山本大貴がフリーでシュートを放つも、枠を捉えられず。序盤からプラン通りに試合を運び、パーフェクトに近い前半を過ごした。

しかし、後半はチャンスに繋がるシーンが少なかった。「前半のいわきはリスク管理に舵を切っていて、いつものいわきではなかった。ハーフタイムで一回(リスク管理を)捨てて、『行こう』となったと思う」とシュタルフ悠紀リヒャルト監督。前がかりになったいわきに対し、長野はビルドアップで攻め急ぐような様子も見られた。58分に藤森がスローインで素早くリスタートし、山本がシュートを放つ決定機もあったが、相手DFに阻まれてゴールならず。その後は勢いに飲まれる時間が続き、終盤に失点を喫した。



いわきにシーズンダブルを許した一方で、前回対戦からの5カ月で大きな成長が見られた。特にビルドアップについては「J3で一番上手くボールを循環させて運んでいるのではないか」と指揮官。その上で「もっと進化できると思う。2人で同じパスラインに乗っていたり、相手をロックできていなかったり、捕まったときのローテーションが少なかったり…。細かいところはたくさんある」と伸び代を感じている。

直近4試合は、攻撃時は4-4-2、守備時は中盤がひし形となる3-6-1を敷いている。これはあくまでシステムの可変だが、いわき戦では流れの中でポジションの可変も見られた。「本来であれば可変の形はあと2つ、3つある。プランAで結構繋げているので、プランB、Cになかなかいけていないが、そこも伸び代」。



こういった複雑な可変を遂げられるのも、選手の高い順応力があってこそ。その中心にいる水谷拓磨主将は「監督が求める戦術が選手全体に浸透してきている。(いわきに)負けたからといってそれをまた変えるのではなく、自分たちのやっているサッカーをブレずにやっていくことが重要」と前を向く。守備時はサイドバック、攻撃時はボランチをこなし、チームの潤滑油として機能。彼を筆頭に、中盤の全ポジションとサイドバックを担う佐藤祐太ら、複数ポジションでプレーできる選手は数多い。

その礎となっているのが、キャンプから落とし込んできた“24の原則”。指揮官は以前、「プレーの判断を助ける原則があるので、どこのポジションに入ってもそこまで迷いはないと思う」と口にしていた。未だ全貌は明かされていないが、第三者としては完成形が楽しみでならない。

残りは11試合。昇格圏内の2位・鹿児島ユナイテッドFCとは勝点8差で、まだまだ射程圏内にある。「ベースは我々が築いてきたオレンジフットボールに変わりはない。そこの完成度を高めつつ、守備は相手の良さが出ないように、攻撃は相手のウィークをついていけるようにというのが私のやり方。それは残り11試合も変わらない」(シュタルフ監督)。

ここまで一度も連敗を喫していないのも、チームコンセプトの一つである『Grow Everyday』を体現できている証。むしろ敗戦も糧に変え、さらなる成長を見せてくれるはずだ。

Reported by 田中紘夢