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【取材ノート:新潟】37歳になってなおサッカーの喜びを感じながら、千葉和彦は先へと進んでいく

2022年10月13日(木)
ホームのデンカビッグスワンスタジアムで勝利したあと、おなじみとなった選手総出でのボウリングパフォーマンス。発案者のDF千葉和彦は、J1昇格を決めた明治安田J2第40節・ベガルタ仙台戦では、松橋力蔵監督を巻き込むスペシャルな演出を成功させた。


37歳のセンターバックは、サッカーをとことん堪能する。引き分け以上で昇格が決まる仙台戦は、今季最多となる3万2979人がスタジアムに詰めかけた。試合前の選手入場時には、MF高宇洋と肩を組むかのように横並びでピッチに入っていった。

「ヤン(高)に『3万人の中でサッカーやるの初めてなんじゃないの?』と聞いたんですよ。『やったことあります』と言ってましたけど、たぶんうそっすね(笑)。だけど、久しぶりに昔のビッグスワンの感じがよみがえりました。いい雰囲気でしたね」

ビッグスワンの観衆が前回3万人を越えたのは、J1時代の2017年にまでさかのぼる。そして千葉がオランダ2部のドートレヒトから“逆輸入Jリーガー”として新潟に加入した2005年当時は、4万人を越える圧倒的な大観衆が毎回のようにホームゲームに押し寄せた。

その後、移籍したサンフレッチェ広島でJ1リーグ3連覇などを経験した千葉は、昨年、10年ぶりに新潟に復帰。それまでの2シーズン、名古屋グランパスでの公式戦出場は1試合のみで、戦いの舞台であるJ2リーグは初めてとなるベテランDFについて、現役時代、新潟で共にプレーしたクラブの寺川能人強化部長は、「まだまだできる」と迷うことなく獲得を決断した。

見立て通りに千葉は、ボールを保持して攻めるスタイルを推し進めるアルベル監督(現FC東京監督)のサッカーにピタリとはまった。機を見て入れる鋭い縦パスが、攻撃のスイッチを入れた。

アルベル監督のサッカーをベースに、今季、松橋力蔵監督が進化させたチームは、センターバックもローテーションする総力戦でシーズンを戦い、J1昇格を果たした。千葉自身は39試合に出場(2得点)した昨季に比べれば、第40節終了時点で24試合出場0得点と、数字的には減少している。しかしその分、コンディションはより良好に保たれ、出番が来れば高いクオリティーを発揮することが可能となった。

仙台戦でもブロックを組んで構える相手に対し、いつものようにビルドアップで存在感を見せた。ボールを動かしながら攻めの糸口を探るだけでなく、0-0で迎えた55分には、強烈なロングシュートでスタジアムを沸かせている。2-0とリードした試合終盤に得たFKでは、近くに転がってきたボールを自ら拾い、セットしてすばやくリスタートさせた。「もう1点取るチャンスがあったから」と時間を使う気配などみじんもなく、チームの攻めの姿勢、ポリシーをくみ取っての振る舞いであった。

攻撃サッカーを志向し、ここまでリーグ最多の71得点を挙げて昇格を決めたチームは、リーグで2番目に少ない33失点という堅守を実現してもいる。

「僕自身は、攻撃から守備への意識が変わりました。そこでの強さと、つぶし切るところですね。つぶしに行ってはがされることもありますが、そのあとの全体での戻りについて、このチームはJ2でトップクラスだと僕は思っています。攻撃のクオリティーが上がれば、そもそも『攻から守』のトランジションも起こらない。仙台戦でもチーム全体で意識してできていたし、さらに追求していきたいです」

37歳になってなお、成長する喜びを実感できる。サッカーを思う存分に堪能しながら、次はJ2優勝に向かっている。

Reported by 大中祐二