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【取材ノート:今治】今治ラストマッチに臨む橋川和晃監督はクラブの哲学を体現する

2022年11月18日(金)


シーズン1試合を残し、J2昇格の可能性がついえたJ3のFC今治は、11月17日、昨年途中から指揮を執る橋川和晃監督の、今季限りでの退任を発表した。

大目標である昇格はかなわなかった。しかし、33節終了時点で積み上げた勝点60は、参入3年目のJ3ですでに最多をマーク。現時点で5位のチームは、最終節ヴァンラーレ八戸戦の結果次第で最高3位でフィニッシュする可能性を残す。少なくとも6位以上と、過去最高の順位も確定済みだ。

橋川監督が、クラブ内のメソッド・アカデミーダイレクターから内部昇格する形でトップチームの指揮官に就いたのは、昨年9月のことだ。2年目のJ3で、今治は開幕からなかなか上昇気流に乗ることができなかった。5月にリュイス プラナグマ監督(ヴィッセル神戸ヤングプレーヤーデベロップメントコーチ)、9月に布啓一郎監督(VONDS市原FC監督)が退任。波乱の中、3人目の指揮官としてバトンを受け取った橋川監督は、クラブのフィロソフィー、岡田メソッドに改めて目を向けることで、チームを立て直した。

これまで育成の指導者としてキャリアを築いてきた橋川監督が、プロのトップチームを率いるのは初めてのことだった。つまり今季は、初めてシーズン最初からの指揮となった。

退任を発表し、最終節を前に今、思うのは、「立ち上げ(チーム始動)のとき、私にも選手たちにも甘さがあった。駒野(友一)ら経験のある選手はしっかり準備してきたが。その悔いは少し残っている」。

去年の9月、シーズン終盤で監督に就任した際にはJ2昇格は懸かっておらず、J3であるがゆえに、降格もない。理念に戻づいたチーム再建に専念できる状況だった。

だが今年は違った。2023年1月に完成する里山スタジアムをJ2で迎えたい。昇格の渇望が一段と強まる中での船出となった。その中で気づいたことがある。

「昇格が懸かってくると、知らないうちにチャレンジをしづらくなる自分がいた。チャレンジしないと、いい流れも変わってしまう。シーズン序盤に(チームを)作って、壊してを繰り返し、固まってくるに従って機能性が高まります。でも同時に、変えづらくなる弊害が出てきて、その難しさがあった。シーズン終盤、準備ができて良い状態の選手がいるにもかかわらず、思い切って変えることができないところがありました」

変えることで、上向くきっかけをつかんだ試合が印象に残っているという。第11節、2-0で勝利した愛媛FCとの「伊予決戦」だ。


負けが込んでいたわけではなかったが、チームは開幕からいま一つ流れに乗り切れていなかった。愛媛戦でチームは、それまでの4-3-3から4-4-2にフォーメーションを変更。攻撃の柱として期待していた新外国人FWラルフ セウントイェンスが悪性リンパ腫で母国オランダに帰って治療に専念することになり、それまでのチーム作りの方向性を変えるタイミングでもあった。伊予決戦の後、チームは10戦無敗など勢いづき、シーズン最終盤までの昇格争いにつなげた。

「伊予決戦は、思い切って変えて勝った試合でした。あそこで負けていたら、チームはガタガタと行っていたかもしれない。4-4-2にして、最初は固まらなかった2トップも固まり、その後、けが人も出て4-2-3-1にしたり、4-3-3に戻したり。思い切って変えられるかどうかが重要だと、改めて感じたています」

今治を率いてのラストマッチ。思い切りのよいさい配で臨む。「最後まで勇敢に戦い、勝ってみんな笑顔で終わりたいですね」。それは、クラブが掲げるフィロソフィーに直結する姿勢でもある。

Reported by 大中祐二