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【取材ノート:今治】ダービーの歴史に安藤智哉の名を刻む攻守での輝き

2022年6月7日(火)


「伊予決戦」と銘打たれた、Jリーグを舞台とする同県チームによる初めてのダービーマッチ。その歴史に「DF安藤智哉」の名を刻んだ。明治安田生命J3リーグの第11節、愛媛FC戦で、前半終了間際の45+4分、ゴール前の混戦でこぼれ球を押し込み、先制ゴールを挙げた。

ホーム、ありがとうサービス.夢スタジアムでのゲームは、時折、強まる雨の中での熱戦となった。チームの課題である得点力不足を解消するため、これまでの4-1-2-3から、前線のターゲットを1枚増やす4-4-2に変更。相対する愛媛は今季、J2からJ3に降格したとはいえ、個々の能力の高さで押される場面もあり、序盤は我慢が必要な展開だった。

公式戦3連敗で迎えるダービーというだけでもプレッシャーはあったはずだ。しかも、わずか12分という早い時間にセンターバックでコンビを組むDF飯泉涼矢が負傷交代。リーグ戦で連勝中の愛媛の勢いを、懸命にはね返し続けた。

新布陣が徐々に機能し始め、ボールが動き始めたのは前半の途中から。押し込み、セットプレーのチャンスも増えていく。迎えた前半のアディショナルタイム。ペナルティエリア右脇からのFKで、ボールの位置に立つ左利きのDF上原拓郎、右利きのDF野口航のところに歩み寄る。

「どこに蹴るのかを確認しました。言われたのは、“ゴールに向かっていくボールを蹴るので、突っ込んでほしい”と。突っ込んだ結果、混戦になって、自分の前にボールが転がってきた」

上原が蹴ったインスイングのボールは大きくなり、ゴールを越えてファーサイドに飛ぶが、2週間前に清水エスパルスから育成型期限付き移籍で加入し、初先発となったFW千葉寛汰が残してフワリと浮かせたボールを蹴り返す。これに、まずヘディングで競ると、愛媛DFの壁にはね返されるが、FW中川風希がオーバーヘッドで狙う。GK徳重健太が辛うじてはじき返したボールを、今度は左足でしっかりと蹴り込んだ。


190cmという長身が買われ、昨シーズンは一時期、FWとしてもプレーした。ただ、今シーズンのチームはリーグでトップクラスのCKの本数がありながら、なかなか得点につながらない。チームメートの中川は、「安藤くんが決めればチームも勝ちますよ」と冗談交じりに期待を表していた。その得点力を大一番で発揮した格好だ。「チャンスがありながら、自分も決められていなかった。こぼれ球を最後、押し込んでの自分のゴールだけれど、全員でボールを運んできた結果、みんなで押し込んだゴール」と、自身の今季初ゴールをかみ締めた。

公式戦で連敗が始まるまで、チームは4試合連続無失点と堅守が戦いのベースとなっていた。だが連敗中、天皇杯1回戦では沖縄代表の沖縄SV相手に、わずか13分間で4失点する衝撃の敗戦。自身も途中交代の悔しさを味わった。前節・松本戦では、バックパスをコントロールし切れず、相手にかっさらわれて手痛い失点を喫している。

苦しみの中で、大いに奮起した。値千金の先制ゴールにとどまらず、77分には得意のロングフィードが起点となってFW近藤高虎の決定的な2点目につながり、守っては無失点に抑えるDF本来の仕事も完遂した。


「毎試合が競争で、誰が出てもおかしくない。そういった中でサッカーをやれている幸せもあります。良い緊張感の中で日々、練習に励めているし、無失点で終われたことはとてもよかった」

自身もチームも、流れを良い方向へと変えられる最高の勝利。初めてのダービーマッチが、前進するための、この上ないエネルギーを与えてくれている。

Reported by 大中祐二