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【取材ノート:神戸】代表ウィーク後、公式戦4連敗。歯車が狂った理由を考える

2022年8月11日(木)
6月29日の吉田孝行監督就任から天皇杯ラウンド16を含めて公式戦5試合負けなしと見事なリスタートを切った神戸。一時はJ2降格圏外の15位に浮上したが、7月中旬に約2週間の代表ウィークを挟み、その後は一転してルヴァンカップ準々決勝2試合を含めて公式戦4連敗。なぜ急に勝てなくなったのか。その理由をやや強引に紐解くと、夏のIN/OUTによる影響があるのかもしれない。

IN/OUTの経緯を見ていくと、まず6月29日に飯野七聖が完全移籍で鳥栖から加入した。右サイドの活性化を狙った飯野の補強は理に適ったものと見ていい。実際、飯野は自身の特長でもある運動量とスピードを活かして神戸に新しい風をもたらしている。補強は成功と言って問題ないだろう。

翌6月30日にはモンテネグロ代表のステファン ムゴシャを韓国の仁川から完全移籍で獲得したと発表された。Kリーグで今季14得点を挙げているストライカーの加入は、故障者が目立つFW陣の救世主として期待されている。

そして7月1日にはロシアのロストフからFIFAの救済処置で神戸に加入していた橋本拳人の契約延長が発表された(当初は6月末までの契約)。ロティーナ監督の契約解除というショッキングな出来事があったものの、後半戦に向けて選手補強では明るい材料が整ったように思われた。

だが、7月18日にその橋本がスペイン2部のウエスカへ電撃移籍すると、似たタイミングで武藤嘉紀が今季2度目の負傷離脱が発覚。続けて菊池流帆とボージャン クルキッチの長期離脱も分かった。

橋本の穴を埋めるような形で発表されたのが小林祐希の加入。橋本とはタイプが異なるものの、日本代表経験のあるレフティの加入には期待感があった。

最後はDFマテウス トゥーレルの期限付き加入だ。昨季をフランス1部のモンペリエでプレーしたブラジル人DFは、負傷した菊池流帆に代わるCBとして効果的な補強となった。

新加入の4人はいずれも実力的に申し分ない選手たちで、離脱選手をカバーする補強としては概ね成功と言っていいだろう。では、なぜ勝てなくなったのか。新しい選手を加えたことで良いチームケミストリーが生まれた一方で、微妙なポジショニングの違い、プレス強度の低下、パスタイミングのズレなどが生じているからだと考えられる。

例えば、ムゴシャのプレッシング。これまでは武藤嘉紀や大迫勇也が激しくボールホルダーに圧力をかけ、相手のパスコースを限定しながら守備にスイッチを入れていた。だが、この4試合を見る限り、ムゴシャはそこまでボールをチェイスしない。吉田監督に交代してから積極的にボールを奪いにいくスタイルへと変わった中で、ムゴシャのプレス強度は及第点に達していないように思われる。

また小林祐がビルドアップ時にセルジ サンペールや橋本拳人らとは違うポジションをとっている場面が見られる。どちらが良い悪いではないが、いるべき場所にいないとポジショナルプレーにズレが生じる。例えば、J1第24節・C大阪戦の1失点目の場面。酒井高徳からバックパスを受けたGK飯倉大樹が相手選手の圧力に屈してパスミス。そこからショートカウンターを食らって失点している。一見、飯倉のパスミスのようだが、今までなら飯倉がタテパスを出した中央のスペースにはアンカーのサンペールや橋本が居た。でも、この場面では誰もおらず、小林祐はやや右に開いて中央を空けている。セオリーが崩れたことによるパスミスだったとも考えられる。

もちろん、ちぐはぐは試合を重ねれば解決するだろう。だが、今はコンマ何秒、数十センチのズレが調和を乱しているとも考えられる。強引に言えば戦術理解度が低下しているのかもしれない。

週末の札幌戦を含め、J1リーグは残り10試合。限られた時間の中で、チームとしてどれだけ同じ絵をピッチに描けるか。J1リーグ残留のキモとなる。

Reported by 白井邦彦