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【取材ノート:新潟】伊藤涼太郎は勝負どころを逃さない

2022年9月30日(金)
J1昇格に向け突き進むチームは、明治安田生命J2リーグ第38節、ホームで大宮アルディージャと対戦した(〇1-0)。コンパクトな4-4-2の陣形で守る大宮の守備を打ち砕くまでに72分を要したが、何人もの選手がパスをつないで挙げた決勝ゴールには、チームが取り組む攻撃サッカーのエッセンスが詰まっていた。


そのスイッチを入れたのが、MF伊藤涼太郎の斜めのパスだ。途中出場のFW鈴木孝司に当てたボールは、MF三戸舜介、DF堀米悠斗、再び鈴木と渡って、最後はペナルティエリアの中まで駆け上がってきたこちらも途中出場のMF秋山裕紀が、プロ4年目でアルビレックス新潟初ゴールとなるシュートを押し込んだ。秋山は“前段”として、スイッチのパスを入れる一手前の伊藤にボールをつないでいる。それは大宮のブロックの内側で、伊藤が前を向けるタイミングを逃さない(あるいは協同してその瞬間をつくり出した)ものだった。

大宮が緩んだつもりはまったくなかっただろう。流れるようなパスの連鎖によって、その守りの無力化に成功した。

プロセスに直接的に関わった鈴木と秋山は、MFイッペイ シノヅカとともに、ゴールが決まる5分前に投入されていた。試合の流れを感知し、勝負する松橋力蔵監督の手腕が、この試合でもいかんなく発揮された。

3枚替えで大きく流れを引き寄せるチャンスが来ていることを、伊藤もまた感じ取っていた。

「フレッシュな選手が入ってきて、それぞれに特徴があり、彼らのプレーによって改めて自分の特徴を100パーセント引き出してもらいました。それまでも含めて、チーム全体で戦えたいい試合だったと捉えています。

ゴールは裕紀が決めましたが、もし間に合っていなくても後ろにはイッペイくんがいたし、他の選手が詰めることができました。そういうところに今のチーム状態の良さを感じます」

大宮戦の前節・水戸ホーリーホック戦(第37節〇2-0)で、9得点6アシストとチームをけん引してきた大黒柱のMF高木善朗が右ひざを負傷。前十字靭帯損傷で、長期離脱を余儀なくされた。高木とともに、中盤でゲームをつくるいわば二枚看板だった伊藤は、チームが表現するサッカーのスタイル、クオリティーに手応えを感じるからこそ、自信を持って最終盤の戦いに臨む。

「残り4試合、プレッシャーを感じていないわけではないですが、こういうプレッシャーを楽しまないと。サッカー選手として、こういう経験はなかなかないし、しっかり楽しみたいと思います」

プレッシャーの中でしっかり前を見て、勝負のパスを入れ続ける。

Reported by 大中祐二