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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:流動的、あるいはシームレスに。今季の名古屋が見出す新たな方向性

2023年2月2日(木)


どうやら2023年の名古屋グランパスのキーワードは、“強力3トップ”でも“堅守”でもなく、“流動性”のようだ。昨季から続く3バックをベースとしたふたつの布陣の熟成にいそしむ沖縄での一次、二次キャンプのなかで見えてきた彼らの強みは、昨季リーグ戦35失点の堅実な守備力よりも、小気味よくリズムを刻む動きのある攻撃だった。千葉との練習試合ではそれがまずまずの形で発揮され、川崎Fとの練習試合ではうまく表現できなかったことで、なおのことそれはチームの中でも明確なテーマになりつつある。

もちろん、無目的にでたらめに、流動性だけを追い求めているわけではない。3-4-3もしくは3-5-2という選手の並びを鑑みたうえで、どうすれば攻撃にスムーズさや流れの良さが出てくるかを熟考した末の産物である。長谷川健太監督は今季の陣容が決まったうえで、キャスパー ユンカー、永井謙佑、マテウスの3トップの共存をひとつの軸に据えたうえで、その運用において3人プラスアルファの有機的で連動した動き出しを何度も教え込んできた。それは最初はいかにして前線に良いボールを届けるか、という方法に見えていたが、今はもっと全体的な動きへと進化しつつある。フリーランによるスペースメイキングと、その空間の有効利用は現在のサッカーにおいては特に珍しいものではないが、名古屋がそこにフォーカスしだしたことは新鮮味があって面白い。

キャプテンで中盤を統べる役割を担う稲垣祥は、フォーメーションを変えて戦った2つの練習試合を振り返り、こう語る。「誰かが抜けたら誰かが入って、そのポジションにも誰かが入って、という循環が出てきていて。良くなってきている感じはある」。その“循環”の感触においては3-4-3の方がややリードしている感があるといい、3-5-2でもさらなる循環の創出に頭を捻る。前線と中盤の人数配分が少し違うだけに見えて、大きな差異がそこには生まれるという。「ポジションを少し崩したりしてでも、どこかで大きな動きを作らないと、循環が生まれてこない」とは、わずか一昨季の名古屋からは想像もできない考え方でもある。



勘違いしてはいけないのは、アグレッシブな攻守を実現すべく、この“循環”という要素が重要視されてきた反面、極端なスタイルをとろうとしているわけではないということだ。堅守はそれでもベースにあり、プレッシングについても行き時、引き時を細かく使い分けることができるのも今の名古屋の強みである。ただし、一度引いてもどこかで押し出していくタイミングを図っているのも彼らの考え方であり、そうしたがっしりとした土台の上で“自由演技”の割合を増やそうというのが実相というべきか。それにしても、循環があった方が良い形ができるとは、改めて彼らの懐に深みができたことを実感する。「守破離」の考え方で言えば、彼らは「破」の段階に踏み込んだわけだ。

されど彼らはまだまだ修行中であり、精度も解像度も納得の行くレベルにまでは程遠い。だが、ポジティブな強化合宿を過ごしていることで、そこに意欲的な取り組みができているのもまた確か。もう一度言うが、2023年の名古屋グランパスは、“流動性”がキーワードである。


Reported by 今井雄一朗