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【取材ノート:神戸】2年ぶりに開幕白星を飾った神戸。それがもたらす“意味”を考える。

2023年2月23日(木)
2月18日、ノエビアスタジアム神戸で明治安田生命J1リーグの2023シーズン開幕戦を迎えたヴィッセル神戸は、新加入のジェアン パトリッキの決勝ゴールでアビスパ福岡を1−0で下した。クラブ過去最高のJ1リーグ3位でフィニッシュした2020年以来2年ぶりとなる開幕戦の白星。この結果がもたらす意味を考えてみたい。


まず昨シーズンを振り返ると、開幕戦で名古屋グランパスに敗れ、浦和レッズ、福岡に引き分け、気がつけばリーグ戦11試合白星なしと落ち込んだ。昨季リーグ戦4試合目の横浜F・マリノス戦(3月2日)で武藤嘉紀が負傷すると、3月15日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフステージではセルジ サンペールが前十字靭帯損傷の大怪我を負い、シーズンを棒に振ってしまう。そして0勝4分3敗の責任を取る形で三浦淳寛監督がチームを離れることになった。その後、リュイス・プラナグマ暫定監督による2試合を経て、ロティーナ監督のもとで守備の立て直しを図った。ACLではグループステージ突破という結果を残したが、J1リーグでは2勝1分6敗と振るわず。結局、リーグ最下位で吉田孝行監督にチーム再建のバトンは渡された。そして「一致団結」の旗印のもと、なんとかJ1リーグ残留を勝ち取ることになった。

今シーズン開幕戦の前日に行われたオンライン囲み取材(2月17日)で、神戸5年目の山口蛍が話した言葉が印象深い。かいつまんで記すと次のようになる。 「横浜(横浜FM)や川崎(川崎フロンターレ)といった自分たちのスタイルを確立しているチームは、開幕戦を落としても試合を重ねる毎に調子を上げていくと思う。でも、神戸はそういうチームではない。今年で5年目ですけど開幕戦に勝ったのは3位に入ったあのシーズンだけ。開幕戦に勝つことは神戸にとって重要だと思います」

そして翌日、神戸は2年ぶりに開幕戦を勝利する。しかも、大黒柱アンドレス イニエスタやサンペール、そしてマテウス トゥーレル、菊池流帆、飯野七聖、大﨑玲央といったディフェンス面の要人が欠場する中で、福岡からクリーンシートで勝利をつかみとった。吉田監督が「競争と共存」をテーマに掲げる今シーズンにおいて、この1勝の意味は非常に大きい。「競争」という点では、開幕戦を欠場した選手たちに間違いなく闘志の火が灯ったと考えられる。「共存」では、誰が出場しても結果を残せるという自信をチームに植え付けることができたからである。

とはいえ、今週末のJ1リーグ第2節・北海道コンサドーレ札幌戦(2月25日)に敗れては“開幕白星”の価値は半減する。逆に、2020年から6連勝中という相性のいい札幌から勝点3を奪うことができれば価値は倍増する。開幕戦で得たポイント3の意味は、今節の結果によって左右されそうだ。

Reported by 白井邦彦