Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:“サブメンバー”とは言わせない。カップ戦開幕で見えた、名古屋の競争力

2023年3月9日(木)
勝利は何にも優る結果だが、あえて言えば勝利にも優る“サブメンバー”たちの躍動だった。8日に開幕したJリーグYBCルヴァンカップのグループステージ第1節、神戸とのアウェイゲームで名古屋は2-0の快勝を得たが、その勝因となったのは2得点の酒井宣福をはじめ、長澤和輝や重廣卓也、野上結貴、内田宅哉らリーグではベンチスタートが多い選手たちの活躍だったことは間違いない。長谷川健太監督は練習試合を含めたゲームでのパフォーマンスを何より重視し、得点やアシストなどの結果もまた高く評価する。この一戦で何かの序列がひっくり返るところまではいかずとも、レギュラーを脅かすだけの存在感を発揮できたのは、チームにとっても大きなことだった。





選手たちの気概も頼もしい。前後半に1得点ずつを奪って勝利の立役者となった酒井は、「今日は本当に点取りたいなと思っていたし、チームのために自分が取るっていう気持ちでゴール前には何度も顔を出したかった。というか、全部フィニッシュは自分が打ってやろうぐらいの気持ちで入れていた」と静かに語った。ゴール後の咆哮は誰よりも激しいセレブレーションだったが、試合を振り返るその表情は淡々としたもの。しかしこの日のメンバー構成について触れると「僕らにはキャスパー(ユンカー)だったり、(永井)謙佑くんとはまた違った特徴がある。そういったものをうまく活かせていけないと、自分たちの存在価値はない」とまで言い切り、覚悟を感じさせた。沖縄でのキャンプでは開始序盤に腹斜筋を痛め、長めの離脱も危惧されるなか、10日程度で「痛みはない」と練習に復帰。「今年は“楽にハードに”をテーマにやっていきます」とリラックスした様子だったが、昨季あれだけ苦労した得点を早めに奪えたことで、今後はさらに肩の力も抜けていくことだろう。



酒井とは別ベクトルでの苦労が続いていた重廣も、神戸で出色の動きを見せたひとりだ。持ち前の運動量を存分に発揮し、本職といえるシャドーの位置でよく走り、ボールに絡み、攻守に緩急やメリハリをつけた。この試合、実はチームは序盤苦しみ、最初のシュートを打つまでに20分間を要したのだが、その1本目のシュートを盛大に外したのが重廣だった。昨季も得点作業において課題を抱えていた選手だけに、おそらく冷や汗もかいたことだろう。だがショックを感じさせることなく彼は直後から“再起動”し、4分後に先制点を演出してみせた。ボール保持がチームのひとつのテーマになっている昨今、彼の持つ流動性とワンタッチプレー、動き直しの量と質はマッチングする能力と言える。以前に起用されていたボランチではその部分がうまく表現しきれないところがあったが、天職たるシャドーに入ったことで視界も拓けた。「本当はもっともっとボールは欲しかったです。でも後半に一回、(長澤)和輝くんが良いテンポでサイドチェンジできた場面もあって。ああいうリズムをリーグでも表現できたらいいかなって。僕が出たら、こういうことをしたいなとは思います」。一時は少し悩みもしたが、良いプレーは心を晴れやかにもする。「結果は個人としてはついてこなかったですけど、楽しくサッカーしました」と言えたことは、重廣の逆襲が始まったことを意味するかもしれない。



もうひとり、11ヵ月ぶりの公式戦のピッチに立ち、改めて自分の価値を示したのが長澤だった。リーグ戦のスタメンボランチは米本拓司と稲垣祥のハードワーカーコンビだが、ゲームメイクに特徴があるタイプではなく、彼ら自身もそこにトライしつつの開幕3試合となっていたところだった。その点で長澤は同じような強度を出しつつ、より攻撃に比重のあるプレースタイルであり、負傷するまでの昨季においてはチームメイトからも「あのフォーメーションは和輝くんありきだった」と言わしめるほどの質も見せていた。結果的にはシーズンを棒に振る負傷をしてしまうわけだが、それだけに彼の復帰、復調はチームにとってはいわば補強に等しく、それを再認識させてくれたのが神戸との一戦だったというわけだ。ボールを受ける、離す、引き取る、運ぶ、守る、さばく、とボールにかかわるプレーで大きな存在感を見せ、攻撃の緩急や相手の隙を突いて前進していく巧みさを誇示し、チームが目指す速い攻撃にアクセントをつけて回った。それでいて彼は飄々として、「今日はボールをつなげる選手がいたし、能力のある選手がいるので。ああいうサッカーがいいかなと思って。ミスを恐れることなく全員でチャレンジできたかな」と事もなげに語る。もちろん神戸はターンオーバーした布陣である、ということを差し引きする必要はあるが、だからと言って簡単な作業ではない。もう一度言うが、長澤の復帰は良い補強になり得るクオリティを見せてくれた。

彼ら3人だけではなく、虎視眈々とスタメンの座を狙う選手のモチベーションは高い。ここからさらにやりくりが難しくなってくる複数大会の掛け持ち、戦力のマネジメントの中で、こうした男たちの健全なる競争意識は必ずやチームを助けるはずだ。

Reported by 今井雄一朗