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【取材ノート:大宮】堂々たるトップデビュー。次なる高みへ、市原吏音が感じたものとは

2023年7月20日(木)


ミッドウィークに行なわれた天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会3回戦。大宮アルディージャにとっては明治安田生命J2リーグを含めた5連戦の4戦目ということもあり、思い切った選手起用があった。

市原吏音。大宮アルディージャU18所属の高校3年生。クラブとしては2010年の宮崎泰右(現SHIBUYA CITY FC)以来となる、アカデミー所属選手のトップチーム公式戦先発出場となった。

「彼のポテンシャルはわかっていたので、いい入り方だけできればスムーズにやれる」(原崎政人監督)

高校1年生の頃から高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグに出場し、2年生となった昨年はすでにU18チームの中心選手だった。同年代との試合では、特に空中戦では負けるのを見たことがない。今年は1歳上のU-19日本代表に召集され、「速くて強くてでかくて、みたいなアフリカ系の選手と対峙した時に、自分はまだまだだなと思った」と新たな刺激に目をギラつかせていた。トップチームでできるのではないか、やらせたほうがいいのではないか――周囲もそう感じていたに違いない。

クラブ史上最年少のトップチームプレーヤーとなった18歳5日の少年は、デビュー戦でもその年齢に似つかわしくなく、堂々たるプレーをキックオフ直後から見せていった。



「緊張しなかったですし、周りとコミュニケーションも良く取れていたので、自信を持って試合に入れたのは良かった。自分がやるべきことは最低限できた」

入ってくるボールは、冷静にしっかりと跳ね返した。攻撃時のビルドアップでは、意図のあるボールを前線に送る。相手のCKでは、中央で手を叩き、声を出して味方を鼓舞。試合開始から数分で、見ている者から高校生が出場しているという感覚は失われたことだろう。それぐらい、まったく“普通に”プレーしていた。

結果としては3失点での敗戦。「デビュー戦にしては好感触的な感じで良かったんですけど、3失点してしまった。個人の課題もそうですけど、やはりチームが勝たないと」と、守備者としては物足りなさも残った。だが、それ以上に得たものも大きかった。

「外国人選手は背後を一瞬で取ってくるし、クロスはめちゃめちゃいいボールが入ってくる。1対1でもなかなか(ボールを)奪えない。守備はもっと強化していかないと、全然通用しないと思いました。ボールも人も速いんで、びっくりしちゃいました(笑)」



言葉の字面とは裏腹に、表情は新たな目標を見出した喜びに輝いているようだった。

当然のごとく、中3日で行なわれた明治安田生命J2リーグ第26節、栃木SC戦でも先発フル出場。リーグ戦20試合ぶりの無失点に大きく貢献した。7月23日からは第47回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会が開催され、日程的に掛け持ちは不可能。Jリーグとの選択があるが、その後も少なからず出場機会はあるだろう。

高校生からプロへと成長していく過程を間近で見ることができるワクワク感。ぜひ、ご堪能いただきたい。

Reported by 土地将靖