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【取材ノート:福岡】全身全霊。福岡への熱き想いを持った金森健志のハードワークは止まらない

2023年8月14日(月)




攻守の切り替えを早く、球際激しく、奪ったら縦に速くゴールに向かう。これは福岡が大事にしているチームコンセプト。明治安田生命J1リーグ第23節横浜FC戦の2分、そのスイッチを入れたのは金森健志だった。前を向いてドリブルを仕掛け、味方に送ったスルーパスは相手にカットされたが、すぐさまプレスバック。「良い感触だった」と本人が話すようにタイミング良く、クリーンなスライディングタックルでボールを奪い返すと、近くにいた前寛之からのパスを最後は佐藤凌我が仕留めた。

この先制点でチームも、そして金森自身も勢いに乗る。48分、左サイドのタッチライン際でボールを受け、ドリブル開始。相手DF2人を力強く、鮮やかに交わし、3人目を引き付けて右足のアウトサイドで絶妙なパス。この日2点目となる佐藤へ最高のお膳立てとなった。

「ハーフタイムにシゲさん(長谷部茂利監督)と話して真ん中のエリアじゃなくてゴールの近くで仕掛けてほしいと言われていたので、そこが頭にあって、あそこではもう仕掛けることしか頭になかったので、上手く(佐藤)凌我がすごいシュートを決めてくれたので、そこは感謝したいと思います」

ベスト電器スタジアムは攻撃の場面だけではなく、守備の場面でも大きく沸く。長谷部監督が就任して4年目。サッカーの楽しさは点を取ること、攻撃だけじゃない。チームで連動してボールを奪う、粘り強く跳ね返す守備があるからこそ、ゴールにつながる攻撃が生まれると福岡の関わる人々は知ったからだ。守備は苦しいものではなく、楽しいもの。プレーする選手たちもそう理解しているからポジションに関係なく、全員がハードワークするし、その姿にサポーターは賛辞を贈る。この日もそう。サイドアタッカーの金森の果敢な守備がなければ大事な先制点も生まれていなかったであろうし、見事な追加点もチームのリーグ戦5連勝、公式戦7連勝にもつながっていなかったかもしれない。

そんな活躍を見せる金森は、2013年に地元の筑陽学園高校から福岡に入団。切れ味抜群のドリブルと縦への推進力が武器のアタッカーは1年目からレギュラーの座を掴むとリオデジャネイロ五輪候補にも選出されるなど実績を残した。その後、鹿島と鳥栖でのプレーを経て2021年に「今までの恩返しをしたい」という想いで復帰。全ては大好きな福岡を強くするために。ストロングであった攻撃面だけではなく、ハードワークによって守備面での貢献度も大きくなった。広くなった視野。自分の武器をどのタイミングでどのように発揮すればチームにとって最大の効果をもたらすか。プレー判断の質の高まりに加え、チームメイトを熱く鼓舞する姿や取材対応での冷静且つ彼らしい素直なコメント、サポーターへの振る舞いを見聞きしているとプレー面、人間面ともに一回りも二回りも大きくなって帰ってきたことを実感させられる。

前節、自身が2019年途中から約1年半在籍した鳥栖との九州ダービーでは決勝ゴールを挙げ、今節も2得点ともに絡んだ。「コンディション面はすごく良いですし、でももっと得点につながるプレーを増やしていきたいですし、何回かミスがあったので、そこはよりクオリティの高いものにしていけるように自分の武器をもっと明確に磨いていきたいと思っています。(チームの連勝は)嬉しいですし、もっともっとできると思うし、チームが良い状態でここまで来て、得点に関わり続けれているので、そこは継続しておごった気持ちならずにもっともっと質を上げて練習したいと思います」。

コンディションが良い理由について本人は「秘密にしておきます(笑)」と茶目っ気たっぷりに答えたが、今までとは違う取り組みが好調を支えているようだ。

そんな彼を長谷部監督は「自分が取るときと、取らせるときと、攻撃の選手にとっては非常に重要なことで、いつも取る、いつも取らせる、その両方できるという選手は相手は止めることが不可能に近いというか難しいです。そういう選手になっているので、これからも期待したいです」と評価し、攻撃の核として期待している。

チームも頑張る。サポーターも頑張る。どちらかが一方に偏ることはなく、共に手を取り合い、共に高みを目指す中で築き上げてきたチームとサポーターとの信頼関係。九州ダービーでより強くなったその絆はこの日のホームゴール裏を中心とした「熱量」の凄まじさによく表れていた。金森もそんな光景を期待して前節の試合後に自身のSNSを通してサポーターに呼びかけていた。

「やっぱり自分のそういう声が届いてくれてて嬉しかったですし、今後も熱いサポートしてほしいなと思いますし、本当に今日も声というか、まとまりも凄かったですし、自分たちのパワーになったので、また一緒に戦ってほしいなと思います」

攻撃も守備も、常に最大出力。「福岡で生まれ育って、アビスパにいた経験があったからこそ、今の自分がある」。福岡への熱き想いを持った背番号7が博多の森を熱狂の渦に巻き込むために魅せるハードワークは必見だ。

Reported by 武丸善章