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【取材ノート:神戸】齊藤未月が負傷後の初公開練習。なんとなく感じた“重い雰囲気”

2023年8月24日(木)
8月22日、いぶきの森球技場のピッチでは至る所でトンボが遊び、ほんのり秋らしい景色だった。とはいえ、気温は35度以上で、肌を刺すような日差しは真夏のそれ。炎天下にさらされる記者たちを気遣い、吉田孝行監督が日除用のテントを用意するようにスタッフに指示してくれた。感謝。

この日の公開練習は少し長めのチームミーティングの後、10時頃から始まった。ウォーミングアップ、ロンド、アジリティ、ポゼッション、ゲームと続き、約1時間で終了となった。この間、選手たちに笑顔も見られたが、なんとなく重い空気が流れているように感じられた。前節の柏レイソル戦に引き分けて首位陥落したのが原因ではない。齊藤未月の負傷のショックによるものだろう。


齊藤未月は前節の柏戦で相手DFに膝を挟まれる形で負傷交代となった。連日のようにSNSや報道で話題に上がり、シュート後のアフタープレーに対する是非や審判の対応などが物議をかもしている。遠くの記者席から状況がつかみ難かったが、近くの選手たちが大声で担架を要求しているのを見て只事ではないことはすぐに理解できた。

公開練習後、囲み取材に応じてくれた武藤嘉紀は齊藤の膝がありえない方を向いているのを目視し、「今まで見たことがない光景でした。正直、前半はプレーできるメンタルではなかった。練習試合だったら立っていられなかったと思う」と振り返った。

「僕は目の前で見ていて、膝がどういう状況か分かりましたし、絶望しました。正直、はらわたが煮えくり返る思いですけど、今は僕らが何かを言うというよりも、未月のサポートをしたいですし、未月が前を向いているからこそ、チームとしても前を向いて行かなくちゃいけないと思います。彼も今シーズン移籍してきて100%を出してくれて、彼の頑張りもあって今の順位(2位)があると思う。本当に悔しいですし、言葉が見つからない」

クラブリリースに書かれていた斎藤の負傷名はこうだった。

「左膝関節脱臼、左膝複合靱帯損傷(前十字靭帯断裂、外側側副靭帯断裂、大腿二頭筋腱付着部断裂、膝窩筋腱損傷、内側側副靭帯損傷、後十字靭帯損傷)、内外側半月板損傷」

吉田監督は「この世界で28年やっているけれど見たことのない負傷。(ケガを負ったシーンを)自宅で映像を見たけど1回しか見られなかった。靱帯が同時に2本切れたり、腱が切れたり、サッカーでは見たことがない」と眉間に皺を寄せた。

ケガの後、齊藤はチームメイトをはじめ、自分を支えてくれている多くの人たちとメッセージのやり取りを繰り返しているようだった。前節の柏戦で復帰した山川哲史には「悲しい雰囲気にしないでほしい」といった返信があったという。選手やスタッフは“いつも通り”を心がけてこの日の練習に臨んだと思われる。もちろん、集中力や強度といった練習の質は変わらないが、なんとなくいつもよりも重い雰囲気だったかもしれない。それでも試合はやってくる。国立で迎える次節のFC東京戦は、ヴィッセル神戸の選手たちにとって一つの試練になるだろう。斎藤負傷のショックにメンタルダウンせず、推進力に変えられるかどうか。J1リーグ初制覇への挑戦は続く。

Reported by 白井邦彦