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【取材ノート:琉球】苦難直面も這い出る岡澤昂星の芯の強さ

2023年8月26日(土)


今季途中セレッソ大阪から育成型期限付き移籍で加入したMF岡澤昂星。加入早々、7月30日(明治安田生命J3リーグ第20節・沼津戦)からスタメンに抜擢され琉球デビューを果たした19歳のボランチは、目標達成に向けて声を出す。

「実際にここへ来てハッキリと感じたのは、琉球はJ2でも戦えるチームであるということ。J2に行くためのメンツはしっかりと揃っている。その事実を証明するためにも今年昇格させることが自分のタスクだと思っています」

中学の頃からセレッソのアカデミーで過ごした岡澤は20年、高校1年でセレッソ大阪U-23の一員としてJリーグデビューを果たし、明治安田J3で30試合プレーした。その後も着々と実績を積んだ彼は22年にトップチームへ昇格。同年3月のルヴァンカップ(大分戦)ではプロ初ゴールも記録するなど階段を上がった。

しかしリーグ戦でなかなか出場機会に恵まれなかった彼は、8月にブラジル1部のレッドブル ブラガンチーノへと半年間の期限付きで移籍する。アカデミーのときから常に上昇志向を育みやすい環境に身をおいていた岡澤にとって、ブラジル挑戦は必然の流れ。

「厳しい環境に身を置きたいというか、人間ってどうしてもそのときの環境に慣れてしまうと成長のスピードが遅れてしまうように感じます。どんどんトライしていきたいし、だからこそ海外でプレーしたいという気持ちもありました」

U-20チームを主戦場に、「生活がかかっているからこそ練習から命がけ」というブラジルサッカーで極限まで鍛錬し、そして実績が認められ背番号10を与えられた岡澤。有望な若手選手が集結する大会【Copinha2023】に出場すると、5試合で3ゴール1アシストと存在感を光らせ、「この経験がサッカー人生のターニングポイントになると思う」と、しっかりと手応えをつかみとったのである。

それでも彼は今、焦りを感じているという。

「中1のときにバルセロナ遠征で対戦したシャビ シモンズ(現ライプツィヒ)と同い年で、プレーの質であったり迫力に直面して正直どん底を味わいました。確かに育った環境は違うけれど、同じ時間を過ごしている中で彼はもうすでに世界と戦っている。まだ19歳だからとは言われるけれど、自分としても『もう19歳』という思いでしかないんです」

なおさら、彼はとにかく試合に出たいと飢えていた。ブラジルから帰国後もなかなか出場機会に恵まれず。カップ戦を含め日本でのプレーは約1年間遠ざかっていて、アピールしたくても出来なかった。

「今までサッカーをやってきた中で一番苦しく、悔しいと感じていたからこそ、今こうして琉球でプレーできていることは本当に選手として幸せなこと。その分、チームを勝たせたいという思いがとても強い。言うまでもなく琉球に来たのはJ2昇格へと導かせるためなので、それを達成して自分自身さらに成長したいと思っています」

その使命感とともに彼は「FC琉球を応援して良かったなと思えるように僕らは戦って、勝って、沖縄県民を笑顔にさせたい」という思いが強いという。その信念を貫き、類まれなボールテクニックと運動量を武器にチームをより一層強くさせたいと話す。

ゆえに中途半端を嫌い、プレーヤーとして目標とするルカ モドリッチ(レアル マドリー)のように90分全力疾走を欠かない岡澤は今、琉球に加入したばかりとは思えないほどの存在感を解き放っている。

Reported by 仲本兼進