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【取材ノート:藤枝】長崎戦は大敗したが次のステップに踏み出した藤枝。残り5試合で、結果を出したスタイルと本来の超攻撃的スタイルの融合を

2023年10月12日(木)
明治安田生命J2リーグ第33節までは8試合勝利がなく、その時点で21位と勝点5差の17位。J3降格の不安も出ていた藤枝だが、その後は熊本戦で9試合ぶりの勝利をつかみ、上位の町田、東京Vに対して粘り強く引き分けに持ち込み、清水戦では歴史的な勝利をつかんで4戦負けなし(2勝2分)。降格の可能性はかなり低くなった。
熊本戦後にアップした前回のコラムでは、「ここからしたたかに上位陣と戦い抜き、しぶとくJ2に生き残っていく姿も、醍醐味十分のエンターテイメントとなるはずだ」と書いたが、それを期待通りに表現してくれた。

そうした結果につながった要因としては、4試合でわずか2失点(3試合が無失点)と守備が大きく改善されたことが大きかった。具体的には、それまでのハイプレス路線から、まずミドルゾーンでコンパクトな守備ブロックを整えたところから前にボールを奪いに行くという路線に切り換えたことで、守備の隙が激減。全員が守備の意識を高めたこともあって、ゴール前での粘り強さも強化された。J2でもっとも攻撃力のある清水を失点ゼロに抑えたことも大きな自信となった。ただ、熊本戦と東京V戦、清水戦はボール支配率が30%台となり、藤枝らしいサッカーができたとは言えなかった。

それらを踏まえて須藤大輔監督は「今はいろんな色で戦える強さを備えつつあると思います。元々攻撃的というのがあるからこそ、ミドルブロックで構えていても前に行ける。今は攻撃で以前までやってきたことを恐れずにやれる土壌はできたと思うので、そこにチャレンジしながら残り6試合を戦っていきたい」と前節・長崎戦の前に語っていた。降格の不安が少なくなった中、次のステップとして、今の守り方に従来の超攻撃的サッカーの要素を融合させることにトライした。だが結果のほうは、一気に攻撃のほうに振りすぎた反動で守備が甘くなり、1-5の大敗。


「ボール保持率を高めようと臨んで、数値的には57%と良い数字が出ましたが、そのサッカーをするには(ボールを失った後に即時奪回に行く)カウンタープレスがセットになっていないと、一気にカウンター食らってしまう。長崎戦ではそういうシーンが多々ありました」と須藤監督は反省点を口にする。
その点についてディフェンスリーダーの川島將は、「守備のやり方を少し変えていた中で(カウンタープレスの感覚を)忘れていたわけではないけど、自分たちの距離感も良くなかったと思います。そこをしっかり確認して、ミドルブロックの守り方と使い分けていくことが大事だと思っています」と語った。

結果を出した4試合では、ミドルブロックでの守備が主体で、攻撃はロングボールが多くなった。そこにプラスする形で、足下のパスをつないでボールを支配しながら攻め続けていく展開に持っていき、失ったらハイプレスで即時奪回という長く培ってきた藤枝スタイルを組合せ、共存させていく。そのスタートとなった長崎戦では、振り幅が大きくなりすぎたことと、多少感覚が鈍っていた部分もあって残念な結果となった。だが、チーム内での方向性と修正点は今週しっかりと整理できた。
「負けなかった4試合でやってきたことと、それ以前にやってきたことを融合させてもっとレベルアップしてやれれば、J2の中でも上位に食い込んでいけるようなチームになれると思っています。そこへの手応えはすごく感じているので、あとは自分たちがどれだけ勇気を持ってやれるかだと思います」(川島將)

残り5試合、藤枝としては消化試合にするつもりはない。勝敗を五分以上に戻すこと、トップハーフに上がることなど来季に向けてやるべきことは多い。そして、それ以上に重要なのが、サッカーの質の面でチームと個人がより成長し、戦い方の引き出しを増やしていくことだ。

Reported by 前島芳雄