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【取材ノート:今治】2012年、新潟での修羅場を知る三門雄大は、決戦を前に奮い立つ。

2023年11月9日(木)


ここに来ての連敗で、FC今治は6位に後退。J2昇格が厳しくなってきた。そして次節は首位の愛媛FCが相手のアウェイゲーム、「伊予決戦」だ。

負ければ愛媛FCのJ2昇格が決まり、1時間早くキックオフされる試合で2位・鹿児島ユナイテッドFCがFC琉球に勝利していると、敗れた瞬間、自分たちの昇格の可能性が消滅する。崖っぷちである。

昇格をたぐり寄せるチャンスはこれまで何度もあった。だが、逃し続けて招いたこの事態。何が何でも踏ん張って、存在意義を示さなければならない。

プロ15年目の三門雄大が前節・SC相模原戦前にチームメートに話したのが、アルビレックス新潟でプレーしていた2012シーズン、まさに崖っぷちに追い込まれたときの経験談。2試合を残し、新潟はJ2降格圏に沈む大ピンチで、迎えるアウェイゲームの相手、ベガルタ仙台は首位・サンフレッチェ広島を勝点1差で追うという、対照的な状況だった。

「あのとき、仙台は前年の東日本大震災もあり、宮城県全体で一つになってリーグ初優勝を目指していると感じられました。正直、ちょっとパワーにも違いがあった。自分たちには『ヤバい、このままでは降格してしまう』という、決してポジティブとはいえない焦りがあった。けれど、仙台は『行くぞ!』という純粋に前向きなものでした」

だが、重圧を断ち切った新潟は仙台に1-0で勝利。決勝点をアシストしたのが、『ボランチなのに、なぜこのタイミングで?』という勢いでペナルティエリアに駆け上がってきた三門だった。チームは最終節にも勝利し、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸を抜く大逆転で残留を果たした。

「なぜ仙台に勝つことができたのか。今、振り返ってみると、先を考えるのではなく、目の前のことにフォーカスしていたからだと思います。残留するかは完全に他力でした。でも、目の前の相手である仙台に勝つことでしか道が開けない状況でもあった。

それが、どこか今の僕たちに通じるところがあるな、と思って。それで相模原戦の前に、2012年の経験をみんなに話したんです。あのとき、降格しそうな追い込まれた状況であれだけのパワーを出せたのだから、昇格に向かっていくポジティブな今、出せるパワーは絶対にもっと強いはずだし、みんなやれるはずだ、と」

連敗し、順位も下がった。昇格をつかめるかも他力である。

それでもうつむいたり、後ろ向きになることはない。このタイミング、シチュエーションでめぐってくる伊予決戦を、むしろ好機と捉える。

「ある意味、サッカーの神様に試されていると思っています。ここで愛媛FCを止めるのか、目の前で胴上げされるのか。何が何でも、地面にはいつくばってでも勝って、この試合を物にすれば、何かが変わると思うんですよ。本当にラストチャンスだし、変えたい。

相手は『今治の目の前で昇格を決めてやるぞ』と意気込んでいるだろうけれど、逆に僕らはそんなことをさせるわけにはいかない。昇格の可能性があるわけですから。必ず勝たなければならないゲームです」

修羅場を潜り抜けてきたベテラン・ボランチが、決戦で待ったをかける。

Reported by 大中祐二