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【取材ノート:神戸】輝きが増している佐々木大樹が、苦労のパルメイラス時代を話す

2023年11月16日(木)
明治安田J1第30節の鹿島戦で2ゴールを挙げ、国立競技場に歓喜と落胆の声をもたらした佐々木大樹。初のJ1リーグ制覇を狙うヴィッセル神戸を、終盤の大事な試合で支えているのが神戸アカデミー育ちの彼である。


もともとポテンシャルはあった。2種登録選手を経て2018年に神戸U-18からトップチームに昇格した佐々木は、持ち味のユーティリティ性とフィジカルの強さを活かしてルーキーイヤーながらリーグ戦6試合に出場し、1ゴールを挙げている。じわじわと人気も上昇。丸刈りヘアと風体が似ていたこともあってブラジル人MFニウトンの弟分的な意味合いで“小ニウトン”というニックネームでファン・サポーターから愛された。

だが、佐々木はシーズン途中にブラジルの名門パルメイラスへと移籍してしまう。神戸でのスタメン定着も十分に狙えるタイミングでの移籍にやや疑問が残った。

翌2019年の途中に佐々木は神戸に復帰する。輝きかけていた原石はその光を弱め、メディア取材を受ける選手を冷やかしながら帰宅の途につくような日々を過ごしていた。1度も公式戦に出場できなかったパルメイラス時代の話を聞くこともなんとなく躊躇われた。結局、パルメイラス時代の話を切り出せないまま時は流れていった。

2023年11月16日。ファンクラブ会員およびメディア向けの公開練習が行われた。全体練習の後に佐々木がメディアの囲み取材に応じてくれた。そしてパルメイラス時代の話になった。佐々木の口からは「試合に出られないのは監督と自分が合わないからだと言い聞かせた。自分の実力がなかっただけなのに…」「自分の立ち位置がわかった」「がむしゃらさがなくなった」「神戸に帰ってきてからアツさん(元スポーツダイレクター・元監督の三浦淳寛氏)に喝を入れられた」など、今なら笑い話にできるエピソードを話してくれた。

そしてパルメイラス挑戦の頃から気になっていた質問をぶつけてみた。なぜ、あのタイミングで、ブラジルへの道を選んだのか。

「もともと中学の頃からブラジルに行きたかったんです。本当は留学する予定をしていたけれど、ヴィッセルのセレクションや練習参加など色々とあっていけなくなった。でも、ブラジルに行きたいという夢はずっとあったんです。だから、(パルメイラスからの)オファーが来た時には飛びつきました」

では、ブラジルに何を求めたのだろうか。

「上手さです。サッカーといえばブラジルという感覚でいましたし、ブラジル代表の試合を見ると面白いじゃないですか。あのサッカーの楽しさを感じてみたいとずっと思っていました」

結果論になるが、いわば暗黒のパルメイラス時代があるからこそ、今の輝きがあるのかもしれない。今季通算8ゴールを挙げている佐々木は、課題とされていた「ゴール前の迫力」(吉田孝行監督)もほぼ克服し、いい選手から怖い選手へと変わっていると言えるだろう。何よりもブラジルの選手たちのように、彼がボールを持つとワクワク感がある。

佐々木は残り2試合で「あと2ゴールは取りたいですね」と話す。どん欲さが出てきた佐々木の覚醒はまだ始まったばかりかもしれない。

Reported by 白井邦彦