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【取材ノート:清水】最後の大勝負に向けて際立つ存在感。清水が誇る最高のセカンドGK

2023年11月30日(木)
11月25日のJ1昇格プレーオフ準決勝・モンテディオ山形戦をスコアレスドローで乗り切り、東京ヴェルディとの決勝戦に望みをつないだ清水エスパルス。山形戦は予想通り非常に難しい試合となったが、その中でチーム全体に大きな勇気を与えた選手がいた。

リーグ戦では出場が0分で、ルヴァンカップの浦和戦(6/18)以来の公式戦出場となったGK大久保択生だ。

これまで絶対的守護神として君臨してきた元日本代表・権田修一がコンディション不良で欠場となり、プレーオフという緊張感がきわめて高い舞台でいきなり出番が回ってきた。34歳のベテランとはいえ平常心で臨むのは難しかったはずだが、彼は堂々とした立ち振る舞いを見せつつ、山形の勢いに押された序盤で好セーブを連発。元チームメイトの後藤優介との1対1も止めて、無失点の立役者となった。


その働きぶりについて、秋葉忠宏監督は手放しで称賛する。

「彼(大久保)は1年間どんな状態でも一番早く練習場に来ています。そういう彼の積み上げてきたものが、こういう大舞台で輝くプレーができる、ビッグセーブすることにもつながるんだと思います。本当にメンタル的にもパフォーマンス的にもプロフェッショナルな選手ですから、あともう1試合最高のパフォーマンスをしてほしいと思ってます」

大久保本人は「自分ができることは変わらないので、自分の良いところを出そう、難しいことはしないではっきりプレーしようと思っていました」とシンプルに考えていた。ただ、試合前から清水サポーターが大きな「択生コール」を贈ってくれたことや、知り合いや元同僚から多くの励ましメールが来たことも力になったと言う。

「嬉しかったですよ。コロナがあってあれだけ人が入って声出し応援の中で試合することもなかったので。だから気負わずやろうと思っていました」

セカンドGKとして悔しい日々を過ごしてきた中でも、サッカーに取り組む姿勢がいっさいブレることはなかった。サポーターも仲間もそれを知っているからこそ、今こそ全力で応援すべき時だと感じていることが、スタジアム全体から伝わってきた。

また大久保自身にも、チームに良い空気を与えたいという思いが強かった。

「自動昇格を逃したことで、落ち込んでる選手も何人かいました。その中で僕とか今までと違う選手が出て、何か良い雰囲気や良いものを出せたらなと思っていました。たまに出た選手が活躍したりすると、やっぱりみんな喜んでくれるし、僕自身も出ていなかった選手が出て活躍したらすごく嬉しいので」

その思いはチームメイトにもしっかりと伝わっていた。

「なかなか出番がない中でも、急に出てああいう活躍するということの意味を、今日出ていない選手も出た選手も、どれだけ自分の中で噛み砕いて行動できるか。これからこのチームが飛躍していくために大事なことでもありますし、残り一つに向けた1週間で、良い影響が出ればいいなと思います」(鈴木義宜)

今季の唯一最大の目標であるJ1昇格を実現するためには、土曜日の東京V戦に勝つしかない。だが、それができるサッカーの質と戦力を備えていることは間違いない。あとは、その力を強い重圧のかかる国立競技場で発揮できるかどうか。その意味でも大久保のような選手の存在は、チームにとって非常に大きな後押しとなるはずだ。


Reported by 前島芳雄