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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:やりきったその先に見えるもの。森下龍矢の選ぶ未来は。

2023年12月21日(木)


森下龍矢がターニングポイントに立っている。日本代表初選出をはじめ大躍進と言えたシーズンを終え、オフも精力的な活動を続けている“本気好青年”だが、16日に行った自らが主催者である「本気塾」というサッカー教室のイベント後、集まった報道陣の前で嘘偽りのない気持ちをさらけ出した。「やっぱり海外にトライしたいって気持ちはすごくあるんで、僕自身」。リーグ最終節の試合後には長谷川健太監督も「いろいろと夏のウインドウで移籍の問題もあって」と話していたが、東欧からのオファーは夏の時点で届いていた。条件面も満たしていた。「でも、今シーズンはやりきらないと」と残留を選んだ末のシーズンオフである。何が起きても不思議はない。

彼は嘘がつけない性分である。うっかりすれば、記者を前にしてもすべてを話してしまいそうになる。それは自分に何一つ後ろめたいところがないという証拠であり、それはつまり海外挑戦という夢に向けても動きはあるということだ。「もちろん優勝したかったですけどね、今年は。何かそういうものを置いていくみたいなことが、ほんとは綺麗だったのかもしれないですけど」。慎重に言葉を選び、森下はできるだけの真心を紡ぐ。

「豊田スタジアムのピッチの上で後悔していることはほとんどないというか、もう出しきれたなと。あがききったなっていう思いもある。あとはどうなるのかは、僕も分からない。あとはもう運でもある。サッカー選手として僕は名古屋が大好きなんで、名古屋でプレーすることが契約として決まったら、もちろん名古屋で全力でプレーしたいと思ってます」



意思表示としては十分な、素直な心境の吐露だった。自分のイベントの翌日には名古屋のイベントがあり、多くのサポーターとコミュニケーションを取る機会があったが、色紙などにメッセージをと言われれば彼は必ずこう書いていた。「全力疾走」。あるいは「前進」の時もあった気がする。いずれにしても、彼の生き方は常に前に進み、突破してこそのものなのだろう。聞けば「龍矢」という名前の由来は坂本龍馬なのだという。父が龍馬ファンで、母親が「馬より矢がいい」と“龍矢”になった。だから、と森下は何かを示唆するように言う。

「僕の名前の『龍』のところに坂本龍馬がいると僕は思っているんです。彼は革新的なことをするじゃないですか。めちゃめちゃ厚かましいですけど、自分で切り開いていく、その先頭に立つみたいなことがすごく好きなんです。この名前のごとく、何かをやっていけたらいいなという気持ちでいます」

もがききった、あがききった、やりきったその先に彼が選ぶ未来とは。トライ&エラーの権化のような熱血漢は、突き進んで自らの道を切り拓いていく。海外でも、名古屋でも、選んだ場所で全力を尽くす。

Reported by 今井雄一朗