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【取材ノート:藤枝】「ここで人生を変える」。藤色をまとった“和製ハーランド”中島大嘉の覚悟

2024年1月11日(木)


成人の日の1月8日、J2で2年目を迎える藤枝MYFCは、初練習と新体制発表会見を行なった。その会見で須藤大輔監督は、今季の目標を「J1昇格」と宣言し、新戦力に関しては「ここにいる選手と既存の選手の融合がどういう化学変化を起こすかというのは本当楽しみでしかないですし、これだけの陣容を揃えてくれたフロントには感謝したいです」と胸を張った。
実際、新加入の10人はJ1クラブからの移籍が4人(期限付きが3人)、190cmのブラジル人センターバックが2人、大卒新人の3人は昨年すでに特別指定選手として公式戦デビュー済みと即戦力ばかり。「我々のゲームモデルに合った選手、去年足りなかったところのストロングポイントを持っている選手に来てもらいました」と指揮官は補強の的確さにも触れた。



そんな多士済々の中でも一際目立っていたのが、札幌から期限付き移籍してきた188cmの大型FW・中島大嘉だ。
まず日本人離れした体格とチームカラーの藤色と金色に染め分けた髪で目を惹き、会見中のサービス精神たっぷりの発言でも報道陣の笑いを誘った。髪色については「名古屋に行ったときは赤にして、藤枝に来たので藤色にしたらサポーターにユニフォームを買ってもらえるんじゃないかなと(笑)」と説明。須藤監督は数々の大胆発言に苦笑いしながらも、「根はすごく真面目」という内面や潜在能力の高さに大きな期待を寄せている。

2021年に国見高校から札幌に加入した当初から、規格外の体格、スピード、パワーが注目され、いつしか「和製ハーランド」と呼ばれるようになったが、彼自身は「地球製・中島大嘉」と主張する。1年目の天皇杯・ソニー仙台戦でプロ初のハットトリックを記録し、2年目はリーグ戦2得点、ルヴァン杯4得点とプチブレイク。パリオリンピック代表のエース候補として期待を集めた。
しかし3年目の昨季はやや伸び悩み、6月に名古屋に期限付き移籍してからもリーグ戦での得点はなく、五輪代表の招集からも遠ざかっていった。そんな中で、勝負の4年目を迎えるにあたって選んだ道が、J2の藤枝での武者修行だった。



「サッカー選手ってJ1でやりたいというプライドもあると思いますが、自分はここで人生を変えに来ました。自分の今後を須藤監督に預けて、ここでがむしゃらにやるだけやなと思って来ました。自分の人生も、藤枝の未来も大きく変えるような1年にしたいと思います」と彼自身も強い覚悟を持ってサッカーの街に乗り込んできた。

複数のオファーがあった中から藤枝を選ぶにあたって、昨年藤枝に期限付き移籍していた札幌の先輩・田中宏武や、名古屋で一緒だった元藤枝の久保藤次郎にも相談したと言う。
「まず宏武さんに相談して、そのときは藤枝には行かへんかなと思ってたんですけど、いろいろ話を聞いて。その後に藤次郎に電話して……トウジは3つ上なんですけど舎弟なんで(笑)たくさん話を聞いて。トウジの活躍ぶりを考えると藤枝もありやなと思って……そこからもう1回本当にいろいろ考えて藤枝に決めました。それをトウジに報告したらビックリしてましたけど、よう選んだなって褒めてもらって嬉しかったです」
悩んだ末に藤枝を選んだ理由のひとつに、自分の特徴を生かしやすいサッカーのスタイルという面もあった。
「札幌とやり方は似てるので共通点はあると思うし、攻撃的で自分たちがボールを持っている時間も長いし、自ずとチャンスは増えてくるかなと思っています。チームがボールを持ってる中で、自分もいかにそこに関わってチャンスを増やせるかという部分も向上させられると思います」



大阪出身らしく笑いにも貪欲だが、サッカーに関しては地に足を着けて現実を見据え、自分がもっとも成長できると直感した環境を選んだ。須藤監督の“育てる力”も信じている。チーム側の視点でも、前線の起点としても、武器とするサイド攻撃のフィニッシャーとしても最高の戦力となりうる逸材だ。
未完の大器が大きく成長して結果を出し続ければ、本人にとってもチームにとっても絶大なプラスとなり、まさにWin-Winの移籍となる。不退転の決断に影響を与えた久保藤次郎の前例を見ても、そうなる予感はチームの始動当初から漂い始めていた。

Reported by 前島芳雄