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【取材ノート:今治】日野友貴はストライカーの感覚にあふれている

2024年4月11日(木)


昨シーズンのJFL得点王、堂々のJデビューだ。

今シーズン、ミネベアミツミFCから故郷である愛媛県のFC今治に完全移籍で加入。明治安田J3リーグ第8節のAC長野パルセイロ戦(△3-3)で途中交代して初出場を果たすと、73分に初ゴールを挙げる。続くテゲバジャーロ宮崎戦(〇2-1)で初先発し、26分にヘディングシュートでネットを揺らして2試合連続ゴール。これが決勝点にもなった。

開幕直前のトレーニングゲーム(対戦相手、結果とも非公表)で負傷し、出場するまで1カ月以上、待たねばならなかった。

「接触プレーで相手に乗りかかられる格好になり、ひざを痛めてしまったんです。自己管理不足から来るけがではなかったので、その分、気持ちをポジティブに切り替えることができました」

復帰の目標にしたのが、4月の宮崎戦だ。4年間プレーしたミネベアミツミFCの本拠地も宮崎県。「テゲバジャーロとの試合には絶対に出たくて、そこから逆算してメディカルスタッフと相談しながらリハビリに努めた」その甲斐あって、1試合前の長野戦の活躍につながった。

長野戦での今治、そしてJ初ゴールのプロセスは、右後方からのロングボールに合わせるところから始まった。直前で味方が頭で触り、軌道が変わったボールに鋭く反応。ダイレクトで合わせたシュートは目前の左ポストを叩いたが、こぼれ球を拾うと素早く態勢を立て直し、反転して右足を振り抜いた。「何人か自分の名前を呼んでボールを欲しがっていたけれど、自分で打とうと足を振った」という決断がストライカーらしい。放ったシュートは、寄せてくる相手の間隙を縫うようにして決まった。


ひざの状態を見ながらのプレーが続く。だが、「ピッチに立てばアドレナリンで痛みは感じない」という言葉通り、宮崎戦でも躍動する。

「ハットさん(服部年宏監督)からは『力を出し切ってこい。90分やることは考えるな』と送り出されました。試合に出る限りは、ゴールを意識してプレーする。そこが出せたと思います。ゴールのにおいがするところに入っていくことができました」

そう振り返る得点シーンに、ストライカーらしい感覚があふれていた。新井光が右からファーサイドに送ったFKをマルクス ヴィニシウスが頭で折り返すと、ゴール正面で2トップを組む長身の阪野豊史がバックヘッド。すかさず右から駆け込み、頭で押し込んだ。

空間を認識する能力のすばらしさは、5分の先制点でも発揮された。170cmと上背があるわけではないが、自陣からのロングボールを相手DFと駆け引きしながら阪野に落とし、阪野のワンタッチパスを受けたエースのヴィニシウスが落ち着いてゴール左隅に蹴り込んだ。


宮崎戦の2点とも、3人のアタッカーが絡んでのゴール。ヴィニシウスの個の力とセットプレーを強みとするチームに、新たな武器が加わりつつある。

JFLのミネベアミツミFCで19得点を挙げた昨シーズン、開幕5試合はノーゴールだった。1点取ると力みが取れてゴールが増え始め、周りからも「また取ったね」と驚かれながら、ついにはリーグ最多得点をマーク。そんな快進撃をなぞるように、新天地でのチャレンジが始まった。

Reported by 大中祐二