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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:“ポグバ”を胸に成長を続ける大器。三國ケネディエブスの底無しのポテンシャル

2024年4月16日(火)


もう、そうとしか見えないのである。個人的には。先日、とある取材で聞いたのは、三國ケネディエブスがセンターバックになる前はポール ポグバが大好きだったということだった。FW時代も身長のせいでポストプレーヤーであることを求められたが、本人がやりたいのはポグバのようなボールを持ってのオンのプレー。だから実は持ち上がるプレーも得意なんですと聞いていたから、最近のアグレッシブな攻撃参加にはワクワクして仕方ない。ドリブルのあとのパスミスが何とも言えない愛嬌に見えるぐらい、ポグバなんだからどんどん行けと思ってしまう。

前半と後半で試合の色がかなり変わってしまった磐田戦でも、三國は好プレーを連発した。時に右サイドバックのようなタッチライン際のオーバーラップも見せ、伸び伸びとボールを触って上下動する。退場者を出した後はDFラインの堅持に努めたが、あのまま11人でのプレーが続けばゴールに絡んでいてもおかしくない奔放ぶりだった。「(和泉)竜司くんとそこはいいポジショニングを取りながらやれているんで、ほんとにいい連係で攻撃につなげていけたらなって、日々考えながらやっています」とは本当にサイドバックのような発言で、右肩上がりの可変3バックの右で起用されたことによって、三國の中のポグバが目覚めようとしているのはまんざら冗談でもないのである。ちなみに彼は、ジェローム ボアテングも好きだ。


忘れてはいけないのは、彼の好調の要因は攻撃が起点ではなく、守備に余裕が出てきたからということ。開幕戦でのミスを大きな教訓として、辛抱強く試合と向き合ってきた甲斐もあり、不安視されたディフェンス面でのプレーはもはやチームの武器にも変わりつつある。磐田戦でも「いいイメージでプレーもできていますし、やっぱり冷静になれているんで。それで今日も立ち上がりからしっかりと自分のプレー、強みっていうのを出せたのが良かった」と充実の表情で勝利を喜んでいた。冷静になれている、というのは興味深いところで、押し込まれる時間帯の守備を振り返っても、やはり状況判断に長足の進歩が見られることが頼もしい。

「後半は特にペナルティエリア内に侵入されることが多かったんで、1-0で勝っているから、ああいう苦しい時間帯に無理くり足とか出してもPK取られてしまったりする。そういったところでの、ほんと1歩の駆け引きだったりっていうのを、今日は集中力を切らさずできたから、ゼロで守れたかなとは思います。他にも苦しい時こそクロスだったり、セットプレーからの失点は多くなってくると思いますから、そういったところで僕の長所でもある高さをチームに活かせたのはほんとにいいことだったなと。空中戦ではほんと負けないようにやっているので、ほぼパーフェクトで毎回守れたらいいなって思っています」



ポテンシャルの底が見えない身体能力を、冷静な判断とともに守備へと活かし、本業の安定感が攻撃に対する持ち味をも引き出している。長谷川健太監督は藤井陽也を引き合いに出してその育成について触れたことがあったが、粗削りの度合いでは三國の方が上かもしれない。ただ、その分だけ期待値は高く、化けた時の理想形は計り知れないところも大きい。改めて磐田戦は守備者として「こういう10人での戦いはあまり経験したことがないので、ひとつの経験として今後に生かせるかなって思います」という経験値になり、“ポグバ”としては「こねててもまあちょっと安心感あるってことで(笑)」と軽やかな手応えも同時に得られた試合だった。

「でも、疲れてきた時の集中力が一瞬切れてしまう場面、今日はそういう集中力が切れた時にピンチはなかったですけど、そういったところでほんとに1本でやられてしまう舞台だと思う」



油断も慢心も開幕戦のピッチに置いてきた。大器の目覚めはまだここからが本番だ。彼の思うセンターバックとしての理想形がどこに向かうのか、楽しみに眺めていきたいものである。

Reported by 今井雄一朗