
努力は裏切らない。それを証明する、横山夢樹の今季初ゴールだった。明治安田J2第11節・レノファ山口FC戦の64分、山田貴文に代わってピッチに入ると、フォーメーションは3-1-4-2から3-4-2-1にシフト。左のシャドーにポジションを取った。すると75分、その2分前に投入されたばかりの弓場堅真からのパスを受け、カットインから右足を振り抜く。巻いてカーブさせるのではなく、ストレート系で落とすシュートがゴール右上にズバリと決まった。
「最初、縦に仕掛けようと思ったけれど、相手がそちらを切ってきたのでカットインしました。あのシュートはずっと練習していた軌道で、それが結果につながって本当に良かった」
このゴールで1-1に追いついたチームは、試合終盤にヴィニシウス ディニスのFC今治加入後、初ゴールで逆転に成功。無敗を10試合に伸ばし、3位に浮上した。
2年前の特別指定を経て、帝京高校からプロとなった昨シーズン、思い切りの良いドリブルとシュートを全面に、リーグ戦29試合に出場して6ゴール。若さあふれるプレーで、チームのJ2昇格に大きく貢献した。
しかしシーズン終盤は右肩の脱臼をきっかけに、十分とはいえないコンディションで戦い続けなければならなかった。シーズン終了後に肩の手術を受け、「4カ月、プレーできなかったのは初めて」という地道なリハビリの日々を乗り越えて、今季リーグ戦2試合目でのうれしいゴールとなった。
ピッチに送り出した倉石圭二監督の、「攻守でなかなかはまらず、流れを変えたかった。彼にはソロで局面を打開できる能力があるので」という期待に見事に応えられたのは、日頃の努力があったからだ。得点のシーンにつなげた弓場自身、ドリブルが得意なアタッカーだが、「中に持ち込んだ際に夢樹がいいところに顔を出してくれた。あの角度は夢樹がいつも居残りでシュート練習をしている角度。迷うことなくボールを託しました」という仲間の信頼が、あの一撃にはこもっていた。
ゴールだけではない。1-1と追いついたあと、守備でも惜しまず走って前からプレッシャーを掛け続けた。チームも最後まで前からはめてボールを奪いに行く姿勢を失わなかったことが、見事、逆転につながった。
「僕たちに同点狙いというのはないです。1-1に追いついたのであれば、次の1点を取って逆転する。そういう共通認識が、このチームにはあります」
連戦初戦を逆転で物にしたFC今治。若きアタッカーが体現する勢いそのままに、突き進んでいく。
Reported by 大中祐二