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【取材ノート:福岡】「自分がチームを救う」。福岡に希望を与える重見柾斗の奮闘

2025年5月8日(木)


スコアは0-1。明治安田J1リーグ第15節・鹿島戦は得点差以上に力の差を感じる完敗に終わった。明るい話題を見つけることが難しい結果であり、ゲーム内容。それでも途中出場でチームの苦しい状況を何とか好転させようと奮闘する重見柾斗の姿に筆者の目は惹きつけられた。


「彼の運動量とタスクというか、やはり勝つための手段、戦略をしっかりと彼に伝えて、彼もそれを表現してくれたのではないかなと思います。危なっかしい場面もありましたが、非常に良く、イメージ通りのプレーをしてくれたのではないかなと思っております」(金明輝監督)

57分にピッチに立った重見は4-3-3のアンカーでプレー。危険となり得るポジションに立つクレバーさと守備強度の高さによるボール奪取に加え、狭いスペースでボールを受け、創造性豊かなパスでボールを散らしながら積極的にビルドアップに関わり、チームにリズムを与えた。

「(金監督からは)守備の部分で前半はフリックだったりで、(相手に)入れ替わられるシーンが多くて、(プレスが)ハマらなかったので、前からどんどん人をハメていって、自分がそこの止めたところを拾うというタスクを言われて入りました。(自分が入って)多少(流れ)は変わりましたけど、自分を含めてもう少し前への配給を増やさないと(相手は)全然怖くはないですし、ビルドアップは前に行くためにしているものなので、後ろで、自陣で揺さぶっても何も意味がないですし、もう少し個人で剝がしたり、間にパスを付けたりというのを増やしていければと思っています。チームの理想としてもそうなんですけど、自分の理想としては、もう少し自陣ではなくて敵陣でボールを揺さぶる、握るというのを目標のゲームプランにしているので揺さぶる位置もそうですけど、握る部分をもう少し前進して相手を見ながら駆け引きしながらしていければ、もう少し自陣でもボールを握れると思いますし、ポケットもとれるようになると思うので、そういうところを増やしていきたいと思います」

最後までビックチャンスを作れず、ゴールを奪えなかった。チームの勝利に貢献できなかった。唇を嚙みながら悔しさを表しつつ冷静に課題を口にした重見。ただ、見ている側からすれば、その思いに共感すると同時にまた彼らしく生き生きとプレーする姿を目の当たりにでき、安堵感を抱いたのが正直な思いだ。

プロ2年目となる今シーズン、開幕戦はボランチで先発出場を果たしたものの、その後、リーグ戦でそのポジションは見木友哉と松岡大起が多く務め、ベンチスタートが続いている重見。それでも、めげることなく、少ないチャンスをものにしようと努力を重ねた。

「選手をしている中で、そういう(苦しい)期間というのは必ずあると思うので、自分自身に常にベクトルを向けてきましたし、こういうチームの流れが悪い中で、チャンスは来ると信じて、そこで自分がチームを救うという思いで準備してきたので、まだこの流れを変えることができていませんけど、そういう思いで毎日を過ごしています。すごく周りの人に恵まれているので、この人(一人)というのは挙げられないですけど、いろんな先輩に話を聞きましたし、この状況を変えようと思って、いろいろアクションをしてすごく周りに助けられました」

金監督は、23歳の重見のみならず、若手選手に対して少ないチャンスを掴んで這い上がって来てほしいと願いながら厳しい眼差しで日々向き合っている。

「僕が若い選手にチャンスを与えて、ベテランの選手たちにも納得感もあるような人選ならばいいんですけれど、使わないということは、そこまで至っていないということですから。ベテランというか、試合に普段絡んでいる選手たち以上にやっていれば自ずとチャンスは出てくるのですが、そこに全然絡めていないのは、やはりそういった面で足りないということです。僕がチャンスを与えるのではなく、自分で掴まないといけないです。そこの履き違いはしてはいけません。待っているだけじゃ難しい、掴み取りに行かないと」

前節の広島戦で出番が回ってきた重見が任されたポジションは本来の中盤ではなく、右WB。「走力もしっかりと蓄えているし、技術力も高いので、そういった起用の仕方もあるのではないかと常に模索はしておりました」(金監督)。掴み取ったチャンスを活かそうと慣れないポジションでも自分の力を信じてアグレッシブにプレーし、一時は同点に追いつくPKを誘発した。

「本当にWBをやったことでどういうプレーをボランチがしたら助かるのかとか、違う視点で見ることができてすごく良かったと思いますし、一つ成長できたと思います」

世代別日本代表の経験を持ち、ポテンシャルは抜群の重見。自分の可能性を広げながら力を示し、存在感が増す中で、現在、リーグ戦5試合勝ちなしの苦しいチーム状況を打破するために次のように意気込む。

「今、チームとして勝てていない本当に苦しい状況ですけど、本当に応援してくれる人がたくさんいるので、その人たちのためにも(これ以上)連敗はしちゃいけないですし、もう1回今年のアビスパが強いというところをサポーターだったり、ファンの人に見せたいですし、そのために全員でまた良い準備をしたいと思います」

日々、自分自身と素直に向き合い、苦難を成長の糧にして本来の調子を取り戻しつつある背番号6。福岡の窮地を救うヒーローになってくれることに期待したい。

Reported by 武丸善章