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【取材ノート:長野】2戦連続の終盤被弾の裏側で...忽那喬司が抱いた葛藤

2025年5月9日(金)


ウイングバックという消耗の激しいポジションにおいて、中2日で2試合連続のフル出場となった忽那喬司。その裏側には藤本主税監督からの厚い信頼と、自身の強い覚悟があった。

明治安田J3リーグ第11節のホーム・SC相模原戦。ケガから8試合ぶりの先発復帰となった忽那は、キャプテンマークを巻いて左ウイングバックとして出場した。

試合前のコイントスを制し、後半にベンチサイドでプレーできるように陣地を選択。「まだコンディションもフルじゃなかったので、自分自身は後半に(藤本)主税さんの力が必要だった」と経緯を明かす。


試合はスコアレスのまま終盤まで推移。拮抗した展開の中、左サイドで上下動を繰り返す忽那の体力が削ぎ落とされていく。

「主税さんも足のことを気にして、75分くらいに『喬司、あと5分で代えるから頑張れ!』と言ってくれた。でも、僕は代わるのがすごく嫌で、『まだ行けるんで』と...」

その後に足をつった忽那だが、最後まで力を振り絞って奔走。しかし、チームは土壇場の89分に先制を許してしまう。90+2分に起死回生の同点弾を決めて引き分けたものの、試合終了と同時に忽那はその場にうずくまった。

「ベンチを見たらカズ(安藤一哉)だったり(樋口)叶だったり、今の自分より仕掛けられる選手がいっぱいいた。その交代枠を使わないままにした自分がいて、すごく申し訳ないなと思った」

そこから中2日で行われた第12節のアウェイ・栃木SC戦。2試合連続の先発となった忽那は、“デジャブ”のような光景を迎える。


前節に続いてスコアレスで終盤まで推移すると、ベンチの藤本監督から「足、いけるか?」と声がかかる。前節の経験もあって「交代しようかな」と考えたが、「逃げたくなかったし、このまま退いてやられるのも嫌だった」。

チームは忽那のハードワークからチャンスを作るも、90+1分に失点して0-1と敗戦。2試合連続で終盤に失点を喫し、勝点を落とした。

「『何か悪いことしたかな...』と思うくらい、この2試合はついていなかった。主税さんは僕を信じて使ってくれただろうけど、僕が味方を信じて交代してもらう選択肢もあった。ただ、何よりも自分を信じたいという気持ちが一番にあった」

忽那が指揮官からの信頼を感じる一方、藤本監督はフルで起用し続けた意図をこう話す。

「点を取るところでは最後のクオリティが必要なので、残しておきたかった。喬司はすごく責任感が強くて、『もう少しリラックス!』とも思うけど、そういう選手がいるのは大きい」

今週末からは県選手権決勝、リーグ戦と、中2日で松本山雅FCとの“信州ダービー2連戦”が続く。地域を背負う責任とプライドが試される中で、忽那は指揮官の期待に応えられるか。

Reported by 田中紘夢
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