4月に入ってから1勝7敗と苦戦が続いている藤枝MYFCだが、チーム力が低下しているという感覚はない。むしろチームも選手も着実に地力を蓄えている感触のほうが強いが、結果を出すという面では、今は生みの苦しみを味わっているように見える。
この状況から抜け出すには、ひとつひとつ結果を出し、自信をつけて、さらなる好結果につなげていくという過程が必要だが、そのきっかけをつかむまでは自分たちを信じて我慢強く細かい修正と成長を重ねていくしかない。
「藤枝のカズ」とも呼ばれる生粋のドリブラー、左ウイングバックのシマブク カズヨシ、25歳だ。
昨年新潟から期限付き移籍で藤枝に加わり、初めて本格的にウイングバックに取り組み始めてリーグ戦31試合に出場。今季は自ら望んでレンタルを延長し、ここまで全15試合に出場している(先発は12試合)。昨季は1年間で1ゴール1アシストだったが、今年はすでにチーム最多タイの2アシストを記録している。
「去年のキャンプの頃は、ウイングバックのことが何もわかってなくて、ポジショニングも守備も全然ダメで、ただボールが欲しくてボールに寄って行っちゃうような状態でした(笑)。それで養父さん(養父雄仁コーチ)や須藤さん(須藤大輔監督)から『まずはこれをやれ』みたいな感じで1つずつ教えてもらってました。最初は右(ウイングバック)をやったんですが、左で出たときにそっちのほうが感触が良くて、左サイドが増えていきました。そういう中で守備も少しずつできるようになって、自分の特徴を生かしやすい立ち位置も覚えて、いろいろ整理できてきたと思います」(シマブク)
そうした昨年の積み重ねを経て、自分のやるべきことや判断が的確にできるようになってきたからこそ、今季はドリブルという絶対的な武器を存分に生かせるようになってきた。
須藤監督も「身体の切れも良くなっていて、自分が持ったら仕掛ける、ゴールに向かうというプレーを、身体も心もリンクさせながらやれていると感じます。周りもカズ(シマブクの愛称)に預ければ簡単に失わないし、1人ぐらい抜くよねということで、前に敵がいても預けるようになっているので、より持ち味を出しやすくなっていると思います」と今季のシマブクについて分析する。
指揮官の言葉通り、ボールキープにもドリブルにも非常に切れがあり、1人2人外すのは当たり前。アタッキングサードでのワンツーなども増えて、クロスやラストパスにつなげるシーンが昨年より格段に増えている。対戦相手にとってはかなり恐い存在になってきたのは間違いない。そのうえで守備での貢献度も昨年より確実に向上している。
「今年はまだ点が取れてないですし、15試合で2アシストというのは少ないですね。去年は全然数字が残せなかったので、今年は最後のところのクオリティと精度を上げることや、シュートまでやり切るというところをかなり意識してます。健さんが新潟に戻るときもそれを言われましたし、左足をもっと使えるようにというのも言われました。そのへんを毎日の練習で取り組んで、少しずつ良くなっているとは思うんですけど、まだまだ足りないということですね」(シマブク)
彼が「健さん」と呼ぶのは、昨年藤枝で16得点を挙げて新潟に復帰し、今季はJ1でも4得点と結果を出している矢村健のこと。シマブクにとっては新潟医療福祉大学の2年先輩で、新潟でも藤枝でも一緒にプレーしてきたもっとも敬愛する兄貴分だ。
その矢村は藤枝に来て2年目でブレイクしたので、シマブクとしても今年は結果を出さなければいけないという危機感はあるが、逆に大きな励みにもなっている。
「今は健さんの背中を追ってる感じですけど、自分も藤枝で結果を残していけば上でも通用すると信じられますし、最高の手本になってくれてます」(シマブク)
シマブクと話していて印象的なのは、サッカーに対して本当に純粋で、素直に謙虚に人の話を聞きながら自分を成長させていこうとする意欲が強いことだ。そのためサッカーIQの面でも昨年から大きな進化を見せているが、本人はもっと高いところを見ている。
「ちょっとは賢くなれましたかね。危機察知能力というか、ここ危ないというところを消せるようにもなったし、守備は本当にゼロだったのが、5段階の2くらいまでは上がったんじゃないですか(笑)」
かなり力を蓄えて自分の魅力を表現できるようになってきたが、まだ思うように結果に結びついていないという状況はチームと同じ。昨年の矢村にも同じような時期はあった。その試練が多少長引いたとしても、目の前の1試合1試合で全力のチャレンジを続けていく姿勢を、シマブクが失うことはないはずだ。
Reported by 前島芳雄
この状況から抜け出すには、ひとつひとつ結果を出し、自信をつけて、さらなる好結果につなげていくという過程が必要だが、そのきっかけをつかむまでは自分たちを信じて我慢強く細かい修正と成長を重ねていくしかない。
ひとつずつ丁寧に積み上げてきた成果として
それは選手個々にも同じことが言える。たとえば先月の取材ノートで取り上げた浅倉廉も今後のブレイクが楽しみな1人だが、もう1人同じような予感を漂わせる選手がいる。「藤枝のカズ」とも呼ばれる生粋のドリブラー、左ウイングバックのシマブク カズヨシ、25歳だ。
昨年新潟から期限付き移籍で藤枝に加わり、初めて本格的にウイングバックに取り組み始めてリーグ戦31試合に出場。今季は自ら望んでレンタルを延長し、ここまで全15試合に出場している(先発は12試合)。昨季は1年間で1ゴール1アシストだったが、今年はすでにチーム最多タイの2アシストを記録している。
「去年のキャンプの頃は、ウイングバックのことが何もわかってなくて、ポジショニングも守備も全然ダメで、ただボールが欲しくてボールに寄って行っちゃうような状態でした(笑)。それで養父さん(養父雄仁コーチ)や須藤さん(須藤大輔監督)から『まずはこれをやれ』みたいな感じで1つずつ教えてもらってました。最初は右(ウイングバック)をやったんですが、左で出たときにそっちのほうが感触が良くて、左サイドが増えていきました。そういう中で守備も少しずつできるようになって、自分の特徴を生かしやすい立ち位置も覚えて、いろいろ整理できてきたと思います」(シマブク)
そうした昨年の積み重ねを経て、自分のやるべきことや判断が的確にできるようになってきたからこそ、今季はドリブルという絶対的な武器を存分に生かせるようになってきた。
須藤監督も「身体の切れも良くなっていて、自分が持ったら仕掛ける、ゴールに向かうというプレーを、身体も心もリンクさせながらやれていると感じます。周りもカズ(シマブクの愛称)に預ければ簡単に失わないし、1人ぐらい抜くよねということで、前に敵がいても預けるようになっているので、より持ち味を出しやすくなっていると思います」と今季のシマブクについて分析する。
指揮官の言葉通り、ボールキープにもドリブルにも非常に切れがあり、1人2人外すのは当たり前。アタッキングサードでのワンツーなども増えて、クロスやラストパスにつなげるシーンが昨年より格段に増えている。対戦相手にとってはかなり恐い存在になってきたのは間違いない。そのうえで守備での貢献度も昨年より確実に向上している。
敬愛するアニキの背中を追いながら
ただ、シマブク本人も現状にはまったく満足できていない。数字の面ではまだまだ物足りないからだ。「今年はまだ点が取れてないですし、15試合で2アシストというのは少ないですね。去年は全然数字が残せなかったので、今年は最後のところのクオリティと精度を上げることや、シュートまでやり切るというところをかなり意識してます。健さんが新潟に戻るときもそれを言われましたし、左足をもっと使えるようにというのも言われました。そのへんを毎日の練習で取り組んで、少しずつ良くなっているとは思うんですけど、まだまだ足りないということですね」(シマブク)
彼が「健さん」と呼ぶのは、昨年藤枝で16得点を挙げて新潟に復帰し、今季はJ1でも4得点と結果を出している矢村健のこと。シマブクにとっては新潟医療福祉大学の2年先輩で、新潟でも藤枝でも一緒にプレーしてきたもっとも敬愛する兄貴分だ。
その矢村は藤枝に来て2年目でブレイクしたので、シマブクとしても今年は結果を出さなければいけないという危機感はあるが、逆に大きな励みにもなっている。
「今は健さんの背中を追ってる感じですけど、自分も藤枝で結果を残していけば上でも通用すると信じられますし、最高の手本になってくれてます」(シマブク)
シマブクと話していて印象的なのは、サッカーに対して本当に純粋で、素直に謙虚に人の話を聞きながら自分を成長させていこうとする意欲が強いことだ。そのためサッカーIQの面でも昨年から大きな進化を見せているが、本人はもっと高いところを見ている。
「ちょっとは賢くなれましたかね。危機察知能力というか、ここ危ないというところを消せるようにもなったし、守備は本当にゼロだったのが、5段階の2くらいまでは上がったんじゃないですか(笑)」
かなり力を蓄えて自分の魅力を表現できるようになってきたが、まだ思うように結果に結びついていないという状況はチームと同じ。昨年の矢村にも同じような時期はあった。その試練が多少長引いたとしても、目の前の1試合1試合で全力のチャレンジを続けていく姿勢を、シマブクが失うことはないはずだ。
Reported by 前島芳雄