
「これ、試合できるのかな…」
5連戦ラストゲーム。8試合ぶりの勝利を目指す一戦だったが、白星を渇望する以前に心配のほうが大きかった。
5月18日に行われた明治安田J3リーグ第13節。AC長野パルセイロはアスルクラロ沼津の本拠地に乗り込み、試合前から“アウェイの洗礼”を受けた。
この日の静岡県東部は濃霧に包まれる天候。時之栖スポーツセンターで行われる予定だったU-18プレミアリーグの試合は、視界不良で中止せざるを得なかった。沼津のホームである愛鷹広域公園多目的競技場にも、例外なく“白世界”が広がった。
まるでゲームの『サイレント・ヒル』に出てくるような光景(サイレント・ヒルは直訳すれば「静かな丘」で、静岡県ゆかりの作品でもある)。記者席からピッチを見渡してみると、バックスタンドの観客がほぼ見えない。すれ違った監督やコーチからも心配の声――というよりも苦笑があった。
試合は無事にキックオフを迎えたが、10分ごろまでは視界を遮られる状況。それでも14時開始ながらLED照明を灯し、視認性の高いオレンジ色のボールを採用したことによって、大きな影響は及ばなかった。
後半は霧も晴れて、本来の白色のボールに戻った。オレンジがチームカラーの長野からすれば、オレンジ色のボールのほうが縁起はよかったが、平常通りに試合が進行できて何よりだ。
思い返せば、長野は昨年1月にも似たような経験をしていた。時之栖スポーツセンターを練習拠点に行った一次キャンプ。ピッチが濃霧に包まれ、練習メニューを変更せざるを得ない日があったのだ。その光景を思い出したのは、筆者だけではないだろう。

それを今度は同じ静岡県東部の地で、公式戦で味わうことになった。ないに越したことはないが、なかなか体験できない貴重な機会。0-0で勝ちきれなかった悔しさとともに、記憶に刻んでおきたい。
Reported by 田中紘夢