
今季、FC今治に加入し、前節の明治安田J2第20節・水戸ホーリーホック戦(●1-2)で、初めての先発。続く第21節・藤枝MYFC戦(△0-0)もゴールを守った。
7試合ぶりの勝利を目指すチームは、試合開始から攻勢に出た。5分、相手陣内の左サイドでFKを得ると、ゴール前に合わせるかと思われるアングルから、パトリッキ ヴェロンが直接狙うコントロール・シュート。惜しくもバーにはね返されたが、12分、弓場堅真の左クロスからボランチのヴィニシウス ディニスが藤枝GK北村海チディの正面を突く強烈なシュートを放つ。14分には横山夢樹がパトリッキ ヴェロンとのコンビネーションで左から中に侵入して強シュート、GK北村の好セーブに遭ったこぼれ球をヴィニシウス ディニスが狙ったシュートはバー上に外れたものの、非常に良い入りをすることに成功した。
だが藤枝の左ウイングバック、シマブク カズヨシが個の力で今治の守備を剥がし、サイドを切り裂き始めると、形勢は一変。コンビネーションを絡めた速い攻撃を受け始め、シュートが次々と飛んでくるようになった。
そんな危険な時間帯に、ゴール前で大きな存在感を放った。19分、右からカットインしてきた浅倉廉が深い切り返しから左足で狙ったシュートをはじき出すと、20分にはシマブクからのパスを受けた松木駿之介の正面からの強烈なミドルシュートをファインセーブではじき出す。21分には、左CKから前今治の中川風希のシュートがポストを叩いたはね返りを、久富良輔に詰められる。だが、すばやいステップでポジションを取り直し、見事にセーブした。
「最近、チームは失点が続いていたので、(失点)ゼロで行こうと後ろの選手で話していました。前半は攻められる場面も多かったですが、そこを乗り切れたのが今日の試合では大きかったと思います。分析で相手はミドルシュートが多いというのも入っていて、そうしたことも含めて、準備してきたことをピッチで出せて良かったです」
試合後の表情は充実感とともに、ここからチームに貢献していこうとするやる気に満ちていた。
今季、ジェフユナイテッド千葉から完全移籍で加入した。だが、新チームでの始動直後にグロインペインを発症。長期にわたってリハビリを続けてきた。
再びプレーできるようになって1カ月も経っていないが、4人のGK陣のうち立川小太郎、伊藤元太の2人が離脱という緊急事態で前節、水戸戦で出番が回ってきた。だが、自身のキックミスからカウンターを受けての失点もあり、1-2で敗れる悔しさを味わった。
「前節、プレーするチャンスをいただきながらチームに迷惑をかけてしまいました。それだけに、この試合に懸ける思いは強かったし、勝てなかったですが、次につながる試合ができたと思います。
正直、この1週間は苦しい思いをしました。それでも試合で使ってもらえることに感謝しているし、だからこそ恩返しをしないといけないです」
修行智仁GKコーチと、改めてコミュニケーションを深めたことも大きかった。
「シュウさんには、試合勘も含めて『お前はこんなものじゃない』と言われました。その言葉で、前を向くことができたんです」
今治の一員として2試合目での初完封は、本人だけではなく、チームにとっても自信になる。藤枝戦までの未勝利中は、6試合連続で失点していたからだ。
負の連鎖の一つを、まずは断った。次は、今治で初めての勝利の瞬間をピッチで味わうために、また1週間、タフな競争に身を投じる。
「失点ゼロは、GKチームで目指しているところです。引き続き試合に出られるよう、さらにがんばります。もっともっと、アグレッシブにやっていきます」
勝利の大前提として、クリーンシートに闘志を燃やす。
Reported by 大中祐二