
シーズン途中で加わった新しい仲間の移籍後初ゴールの起点となり、ペナルティキックによる同点の危機も見事に跳ね返した。だが、それでも敗れた。明治安田J2リーグ第22節、RB大宮アルディージャはいわきFCを迎えたが、今季ここまでリーグ戦無敗を誇ったホーム、NACK5スタジアム大宮での初黒星となった。
「ゴール前でいわきは上回って、うちが劣っただけ」。そうは言ったが、試合後の笠原昂史の心のうちは、悔しさがあふれそうになるのを必死で抑えているように感じられた。いいところも多かった自身のプレーについては、「できたところと改善すべきところがある」と、結果が伴わなかったこともあり言葉少なだった。
18分の津久井匠海のゴールにつながったように、ロングキックの精度は高かった。62分にも同様に裏を狙い、ファビアン ゴンザレスがヘディングシュートを放ったが決まらず、悔しそうな表情を見せていた。
26分のペナルティキックは、キッカーの方向などのデータも含めながら、「あんまり駆け引きとか考えずにしっかりと跳ぶ、後悔のないように方向を決めてプレーするだけだった」と振り返る。それが、右手一本でのファインセーブにつながった。
後半の2失点は、チームとしてミスもあり運もなかった。1失点目は、マークを外してしまった相手選手に鼻先で触られるような形。2失点目はシュートがガブリエウに当たって大きく方向が変わり、相手にとって奇跡的なシュートコースになった。いずれも、GKとしては対処が難しいものだった。
「別に今日だって全て悪かったわけじゃない」
その言葉には大きくうなずきたい。前半にもう2~3度あったチャンスのうちのどれか1つ2つが物になっていれば、試合はそこで決まっていたかもしれない。でも、そうなる試合もあればならない試合もある。その一つひとつを積み重ねて覇を競うのが、リーグ戦だ。

過去、J1昇格を成し遂げた2シーズンも、2004年は序盤に、2015年は終盤に勝点が伸びない時期を経ている。順風満帆のシーズンなどなかった。5分け1敗と6戦勝ちなしの今が底なのだとすれば、もがいてでもあがいてでも脱出するしかない。
「このスタジアム…(長澤徹)監督も、要塞とか自分たちの家って言いますけど、相手にとってもっと嫌なスタジアムになるために、もちろん僕たちが戦うのは大前提として、もっとみんなを巻き込めるような、周りの人たちを巻き込んでもっと応援したいなって、後押ししてもらえるようなチームになりたい。もっと一体感を持って戦っていきたいと、個人的には思ってます」
チームもサポーターも一つになって、この難局を乗り越えていこう。その先に、明るい未来が待っていると信じて――。
Reported by 土地将靖