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【取材ノート:千葉】『前から行く』を体現したボール奪取が光る小林祐介がスタメン出場で感じたこと

2025年7月10日(木)
明治安田J2リーグ第20節から連敗で迎えた第22節のジェフユナイテッド千葉は、第19節で乱暴な行為による退場処分で3試合出場停止となったエドゥアルド、前節で警告を受けたため累積警告で出場停止となった品田愛斗と、ボランチでプレーする2人が不在。さらに、第21節で79分に交代した田口泰士は、コンディション不良で試合のメンバーから外れた。ボランチの選手不足という状況下で、今シーズンのリーグ戦で初スタメンとなったのが小林祐介だった。

2023シーズンには、相手の動きを予測してボールを奪い取る守備を披露し続け、試合に欠かせないボランチとしてJ2リーグ戦で32試合に出場した小林。しかし、2024シーズンに加入したエドゥアルド、2024シーズンの開幕後に加入した品田とのスタメン争いの末、今シーズンのJ2リーグ戦は第21節まで9試合にベンチ入りしたものの、出場は開幕戦での交代出場の1試合のみと激減した。そして、今シーズンのJ2リーグ戦以外の公式戦全体でも、試合出場はYBCルヴァンカップ1stラウンド1回戦でのスタメン出場の1試合にとどまっていた。

「ずっと試合に絡むことができなくて悔しい思いをしてきた中で、このチャンスを必ずつかみたいというメチャメチャ強い気持ちで試合に入りました。出場機会がなかなかないというところでパフォーマンスとしては難しいところもありましたけど、そんなことは関係なく、チャンスが来た時にそれをつかまないと次はないなと思っていたので。でも、結果としては負けてしまったので、すごく悔しい気持ちでいっぱいです」

小林が自分にとって『最後のチャンス』という強い気持ちで臨んだ一戦だったが、結果は69分にオウンゴールによる失点もあって0-2の敗戦。だが、例えば6分に小林は自分の武器を披露する。ディフェンスラインに下りてボールを触り、自分がパスを出した鈴木大輔の縦パスが鳥栖の選手に奪われると、ボールの取りどころを考えてポジションをとった。そして、鳥栖の山田寛人にボールが入ると、すぐさま体を寄せてボールを奪い取ったように、試合の中で再三、持ち味を発揮したプレーを見せた。

「自分の特長は自分にしかできないものだと思うので、そこは前面に出したいという強い気持ちで試合に入りましたけど、それがなかなか難しい中で結果も付いてこなかった」

千葉は田中和樹が負傷で14分に横山暁之と交代するというアクシデントが発生。試合後の記者会見で小林慶行監督が口にしたように、その負傷交代によって予定していた攻守のゲームプランが崩れたのは間違いない。それでも、その後に試合の流れをつかんだ千葉だったが、思うように決定機を作れないでいると、次第に鳥栖が主導権を握るようになり、31分に鳥栖に先制点を奪われてしまった。

「今日は前から(守備に)行こうというところで、相手の(ポジションに)合わせて守備でハメて行って、立ち上がりはいい状態で行けていました。でも、自分たちが先制点を狙っていた中で、先に失点してしまって自分たちで試合をちょっと難しくしてしまいました。今日は守備では後ろを5枚気味にして和樹のポジショニングで相手のウイングバックの位置を落として、守備でハメに行くという狙いがあったんですけど、アクシデントがあってそこで少しやり方を変えました。でも、それはそこまで関係なく、自分たちで変化しながらやらないといけないですし、目の前の相手に負けないというところでもう少しやれたのかなと思います。後半には自分たちが押し込む時間帯があった中で、『1点』がなかなか取れなくて2失点目を食らってしまったというのが、ゲームを難しくしてしまったのかなと思います」

小林と同様に第22節が今シーズンのJ2リーグ戦で初スタメンだった植田悠太とともに、巡ってきたチャンスで自分の力を発揮した。それでも、敗戦という結果を考えると、試合出場によって得た収穫よりもクリアすべき課題ばかりを考える。

「プロとしては結果がすべてなので。メチャメチャ強い気持ちで試合に入っていても、やっぱり結果が出ないと厳しい世界だというのは、僕が一番分かっている。そういったところで、まだまだ自分にも足りないところがあるし、チームに貢献できていないところが大きい。力不足なので、練習からまたやり続けるだけですね。チームとしても点を取って勝つために、今日の試合から改めて意識的にやっていこうとした『前から行く』という自分たちの特長を信じてやるしかないですね。もう一度原点に戻ってというか、そういうふうにやっていくしかないと監督も言っていたので、そこはブレずにやり続けるしかないです」

素晴らしいボール奪取能力、そして攻守で味方を助ける気の利いたポジショニングが武器の小林は、得点に絡むプレーに物足りなさがあると言われがちだ。だが、今シーズンの新体制発表会見が開催された1月11日、千葉U-18とのトレーニングゲームではゴール前に上がって行ってゴールを奪っている。公式戦で得点する機会はなかなかないが、チームがより前でボールを奪う守備ができれば、小林が得点に絡む機会も増えるだろう。そのためにもまずは試合に出る。チームが苦しい時こそ、小林のように苦しい時期を耐えながら鍛錬してきた選手の力が必要だし、重要だ。

Reported by 赤沼圭子