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【取材ノート:福岡】巧さ光るチームプレイヤー・ナッシム ベン カリファを支えるポジティブな思考

2025年8月26日(火)


「巧い」

明治安田J1リーグ第27節・清水戦。試合開始から61分間、1トップに入ったナッシム ベン カリファのプレーを見ながら筆者は何度も同じ言葉が声に出た。

的確なポジショニング、繊細なボールタッチ、巧みなボディコントロール。相手のタイトな守備を搔い潜り、ライン間でボールを受けて展開し、チャンスと見るや自ら足を振る。福岡の攻撃を活性化させ、大きな存在感を示した。

「ああいったポゼッションのフットボールができたというのは一つポジティブだと思いますし、自分の強みであるコンビネーションだったり、連携という部分は、より出せたと思います」

だが、結果はスコアレスドロー。リーグ戦の連続無敗記録は9に伸びたが、その内引き分けは6。ゴールをこじ開けきれずに勝ち切れない試合が多くある中で、次のように課題を口にする。

「ボールをある程度(前に)進めた段階で、もう少し早いペースでボールを回すことができたのではないかというのは、(清水戦で)自分が思ったところでもあります。中盤からのパスが少し遅くなっている部分もあったと思うので、そういったタイミングを逃さないというのも、今後の鍵の一つになるかなと思います」

ストライカーポジションでプレーする選手として常に求められるのはゴール。だが、彼はそこに固執しない。決してエゴを出さず、周りを活かし、周りの役に立つプレーを優先する。例え、自分が点を取れなくてもチームで取れればいい、それでチームが勝てればいいという思考の持ち主だ。だからこそ、こんな考えでプレーしている。

「攻撃の選手としてシュートだけではなく、ゴールだけではなく、よりチームをつなぐ役割だったりとか、ボールをキープするというところもあると思います。ただボックス内に留まっているのであれば、それはちょっと簡単すぎるというか、より攻撃の選手としてはいろんな部分に関わっていく必要があると思います」

福岡にやってきて2年目となる元スイス代表の実力者は、怪我に悩まされ続けてきた。昨シーズンは、リーグ戦2試合の出場にとどまり、今シーズンも清水戦が約4ヶ月半ぶりの先発となったようにここまでリーグ戦9試合の出場、1ゴールと決して思い描いた活躍ができているわけではない。

「まずひとつ、(怪我が)より悪い状況にもなり得たという状況がありました。また、本当に長い期間、3年間も戦列を離れるという大きな怪我をする選手もいますし、事故に遭う選手ももちろんいます。自分の場合は、強いメンタリティというのが自分の特徴で、たとえ復帰までに10年掛かったとしても、自分は毎日ハードワークをしてピッチに帰れるように頑張っていきます。もちろん、難しい期間はありました。33歳という年齢もありますし、これほど大きな怪我というものは経験したことがありませんでした。福岡に来てから怪我を繰り返していますけど、その中で自分自身が言えることといえば、それが人生の一つ、人生の一部ということであって、起こり得るものとしてネガティブに捉えないということです。メディカルスタッフも親切に助けてくれるので、自分の貪欲さというものを常になくさないようにして、常にポジティブに取り組んでいます。ポジティブさがなくなった時が自分がサッカーを辞める時ですけれど、その時は来ないと思っています」

ピッチ上で見せる力強い表情とは対照的にピッチを離れればにこやかな笑顔を見せ、人の気持ちに寄り添ってくれるナイスガイ。常に取材にも真摯な姿勢で対応してくれ、記者に対しても分け隔てなくリスペクトを持ってくれているからこそ自然と次のような言葉が出てくる。

「例えば、記者のあなたが3年間仕事ができなくなったとしても、この仕事が好きであれば、ここに戻ってくるために、毎日ポジティブに取り組むと思うので、そこは同じですよ」

常にポジティブに。ナッシム ベン カリファは苦難に屈せず、チームのために前だけを見据えて戦っている。


Reported by 武丸善章