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【取材ノート:新潟】高宇洋が向ける矢印の先に

2022年4月28日(木)
2-0で勝利して5戦無敗、ホーム5連勝とした第12節。しかし内容は際どいもので、完勝とはいかなかった。

プレスを仕掛けてくるいわてグルージャ盛岡の選手たちはハードワークをいとわず、連動性があった。それゆえ強烈で迫力満点。ビルドアップしようとするアルビレックス新潟に向けられたプレスは野太い矢印となって、ビッグスワンの記者席からもはっきり分かった。

新加入のポルトガル人FWアレクサンドレ ゲデスが初先発するなどメンバー変更がある中、プレスの勢いにのまれるかのようにチームにはミスが出た。カウンターからピンチを招く。島田譲とドイスボランチを組んだ高宇洋も、最初は難しさがあったという。

瞬時に取り囲む岩手のプレスの前に、珍しくボールを失う場面もあった。だが、ずば抜けたボール奪取能力と、プレッシャーをものともせずボールを運べる馬力あるボランチにとって、それは必然ともいえた。

「プレーのリズムを出したくて、最初はディフェンスラインに落ちてボールを受けていました。でも、落ちすぎるとかえってパスが引っ掛かって攻撃がうまくいかない。途中から後ろのビルドアップはある程度センターバック2枚に任せて、自分は我慢して踏みとどまり、プレーする位置を3~4メートル上げました」

その結果、ボールを受けても時として奪われるシーンにつながるわけだが、「取られても奪い返す自信があった。プレスを受けたからといって前を向こうとしなければ、成長はない。“後ろ、後ろ”の選択ばかりでは、相手も恐くない」と、プレーの矢印を相手ゴールへと力強く向けていった。

より高い位置でプレーするようになると、ボール奪取が際立ち始める。オープンな攻め合いとなった終盤、途中出場の三戸舜介が挙げた88分の追加点は、勝利をグッと引き寄せる価値ある一撃となった。始まりは、中盤で踏ん張り続けたボランチの、自陣でのボール奪取から。つついたボールが相手に当たり、こぼれたところを三戸がすかさず拾って持ち上がり、決め切った。


ボールを失うことを恐れずチャレンジし、チームを勝利へと導いていった胆力はさすがのひと言。だが、ミスでボールを失うことに対しては極めて厳しい目を向ける。

「メンバーが変わっても、同じサッカーをやらないと。最初は質を出せませんでした。自分のプレーをもっと突き詰めていかなければならないし、周りにも要求したい。そうすることで存在感を出していければ」

新潟に加入して2年。24歳のボランチは、中盤の王としてチームに君臨しつつある。

Reported by 大中祐二