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【取材ノート:長野】守備の要・喜岡佳太が“個人昇格”。その意味とチームの行方

2022年7月19日(火)
AC長野パルセイロは7月18日、喜岡佳太のモンテディオ山形への移籍を発表した。加入3年目の今季は、ここまでセンターバックとしてリーグ戦全17試合に出場し、1得点を記録。シーズン途中にJ3からJ2への“個人昇格”となったが、長野にとっては言うまでもなく痛手だ。



シュタルフ悠紀リヒャルト監督が「身体能力はJリーグの中でも卓越している」と評するほどの“フィジカルモンスター”だった。それに加えて今季はビルドアップも強化。シーズン当初は危うさが垣間見られたが、徐々に安定感を増していった。シュタルフ監督は「もう少しここで学んでからステップアップしてほしかった」と吐露しながらも、「(山形の)クラモフスキーさんもビルドアップを志向する監督だと思う。ここで学んだことを継続して取り組んでいくという部分で、良いクラブなのでは」と話す。

J3全体を見ると、上位カテゴリーへの移籍は今夏初めて。これについて指揮官は「我々が良い育成をしているという見方もできるし、パルセイロの立ち位置は育成しながら上を目指すというふうに変わっている」とポジティブに捉える。クラブとしては昨夏に秋田へ移籍した藤山智史に続き、2年連続でのシーズン途中のステップアップ。決して潤沢な資金力とは言えない中、育成面で一定の成果を上げている。

問題はどう穴を埋めるかだ。シュタルフ監督は「一人が欠けて崩れるようなチームづくりをしてきた覚えはない」と語気を強めるが、本職のセンターバックは池ヶ谷颯斗、秋山拓也、敷田唯の3人のみとなった。「試合でスタメンやサブの椅子は埋められても、我々には練習もある」と言うように、紅白戦や練習試合も考えると人員不足は否めない。クラブは現有戦力の飛躍に期待しつつ、すでに補強にも動いている。



ここまでサブからのスタートが多かった秋山は、「いる選手でやっていくしかない」と決意を改める。足元の技術とセンスが高く、第15節・相模原戦からは2試合連続でボランチとしても出場。指揮官は「コンバートしかけていたところなので少し残念」と嘆いたが、本人は「どのポジションで出ても全力でやるだけ」と出場機会に飢えている。



それは敷田も同じだ。大卒1年目の今季はメンバー外が続き、「悔しさと情けなさしかない」と唇を噛む。対人の強さが武器で、ビルドアップも卒なくこなせる万能型。178cmとセンターバックにしては小柄だが、ヘディングにも力強さがある。裏を返せば器用貧乏と言えるかもしれないが、人員不足の今がチャンス。巻き返しに向けて「これまで以上に気持ちを入れてやっていきたい」と意気込んだ。

チームは前半戦17試合を終えて17失点。1試合1失点というペースは決して悪くないが、喜岡が抜けた今は正念場と言える。「守備陣には『ピンチはチャンス』だと思って自分が勝ち取るつもりでやってもらえれば、良い効果をもたらす移籍になるかもしれない」とシュタルフ監督。補強への期待も少なからずあるが、それ以上にまずは現有戦力の飛躍を願いたいところだ。

Reported by 田中紘夢