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【取材ノート:新潟】成長を止めることなく高木善朗は大目標に達する

2022年7月15日(金)
6年ぶりのJ1昇格に向け、激しい首位争いを繰り広げているチームにとって、明治安田J2第26節・レノファ山口戦は長いシーズンの分岐点となり得る重要な一戦だった。前節、ジェフユナイテッド千葉に競り負けて今季5敗目を喫し、生え抜きで10番を背負う本間至恩が自身の夢にチャレンジするため、欧州に旅立った。もし、ここで今季初めて連敗するようなことがあれば、チームはガクッと調子を崩しかねない。重圧がかかるゲームで、高木善朗は大黒柱として存在感を見せつけた。

入ったポジションは、主戦場である4-2-3-1のトップ下。しかし、“定位置”にこだわらない自在のポジショニングによって、攻撃を活性化させた。


45分の先制場面では、左に開いてボールを引き出し、縦のスペースにパスを滑り込ませて星雄次のアシストをお膳立て。73分には自陣からの速攻で中央を持ち上がり、右前方を行く鈴木孝司に絶妙なパスを通す。鈴木の折り返しから、伊藤涼太郎が3点目を決めて、チームは3-1で勝利。3ポイントを積み上げ、横浜FCと勝点で並ぶとともに、得失点差で再び首位に立った。

勝利の価値をいっそう高めるのが、“ポスト至恩”の可能性を結果とともに示したことだ。ドリブラーの本間がプレーしていた左サイドハーフには、高木と同様に巧みな配球を見せる伊藤が入った。

「至恩のドリブルがチームの武器だったことは事実。今日は違った形で左サイドから崩せたのがよかった。自分が左に流れて涼太郎が中に入ってきたり、相手に的を絞らせないメリットが今回のメンバーにはある。素早くボールを動かせたし、コンビネーションも出せた」

伊藤と頻繁にポジションを入れ替わり、どこからでも勝負のパスを出せる構えを示した高木。その貢献は攻撃だけではない。山口ボールになると鈴木と2トップ化し、ビルドアップしようとする相手に強烈なプレッシャーを掛け続けた。

「メンタル的にここを乗り越えられたのは一つの成長。至恩がいなくなってもできると証明できたし、これで成長を止めないことが昇格につながる」

昨季、10ゴール14アシストという圧巻の数字を残したプレーメーカーは在籍5年目。降格し、J2で繰り広げてきたチームの苦闘を、痛いほど知る。だからこそ、節目となるゲームを制してなお、ミックスゾーンで表情を引き締めた。

Reported by 大中祐二