Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:藤枝】最終節を前にまた一皮むけた藤枝の選手たち。最後まで自分たちのエンターテイメントサッカーを貫き、J2に羽ばたけるか

2022年11月17日(木)
すでにJ2昇格はほぼ確実になっている。

現在2位の藤枝は勝点66。それを追う3位・鹿児島と4位・松本は共に勝点63。もし最終節でこの2チームが勝ち、藤枝が負けたとすると、3者が勝点66で並ぶ。だが得失点差を見ると、現時点で藤枝は鹿児島より15点、松本より17点上回っている。この差を逆転するのは奇跡に近く、その奇跡が起こらないかぎり藤枝の悲願が成就することになる。

ただ、まだ何ひとつ決まったわけではない。

「最終節の長野という相手にしっかり勝たないと、J2に行っても絶対通用しないと思うので、しっかり最後までやりきって、勝って喜びを爆発させたいと思います」と須藤大輔監督も前節・福島戦の後に語った。

その「やりきる」という部分が、最終節・長野戦の最大の楽しみと言える。

今でこそ藤枝がJ2昇格にふさわしいチームであることは誰もが認めるところだが、今季のここまでの歩みはけっして順風満帆だったわけではない。序盤は黒星が先行して6節終了時点で12位。12節・松本戦、13節・今治戦での悔しい連敗もあり、それをバネに課題を克服して、クラブ新記録の6連勝を飾った。

だが、その後は天候の影響で2節続けて試合が延期になり、試合勘が鈍った中で迎えた22節いわきとの直接対決には0-3で完敗。さらに9月には15日間で5試合という過酷な連戦を課せられた。その5連戦では、前半に退場者が出て長時間10人で戦ったゲームが2度あったが、それでも4勝1分で乗り切るタフさや勝負強さを発揮。そして28節では松本との直接対決を1-0で制し、次の富山戦には4-1快勝。昇格争いのライバルを続けざまに倒して、ついに2位まで駆け上がった。

しかし、そこからは選手たちに硬さが出て、3戦勝ちなし(2分1敗)と足踏み。昇格争いのプレッシャーが若いチームを縛り付けていたが、前節の福島戦で「鎖を断ち切って」(須藤監督)自分たちのサッカーを取り戻し、ライバルの結果にも手助けされて昇格に王手をかけた。

まさに波瀾万丈。苦難やつまずきから逃げることなく、真正面から立ち向かいながらチームも選手も大きく成長を続けた1年だった。

福島戦が終わった後、ダブルキャプテンの1人、川島將は次のように語った。

「ここ3試合は足踏みしましたが、今まで積み重ねてきたものがあったからこそ、自分たちが何ができていないのか、はっきりわかるんですよ。やれないことをやろうと言ってるわけじゃなくて、やれていたことをもう1回やろうということで、今週は全員がそこをずっと意識して練習してきました。今日の1点目は全員が絡んでゴールまで行けたと思うし、ああいうのを僕らはずっと目指してやってきました。原点というか自分たちがやれることを意識するだけで、今日のようなパフォーマンスができたので、やっぱり積み重ねというのはしっかりと出るんだなと。だから今回足踏みした経験というのも、すごく貴重だったと思います」

昇格への過程で、また大きく一皮むけた藤枝の選手たち。

長野戦はプレッシャーからも解放され、自分たちの“超攻撃的エンターテイメントサッカー”を存分に披露する舞台でもある。それを「やりきった」うえで有終の美を飾って歓喜を爆発させる姿を、藤枝のファン、サポーターだけでなく、まだ暗いムードが残る静岡県民にもぜひ見せてほしい。

Reported by 前島芳雄