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【取材ノート:今治】かつて、今治に来た駒野友一が変えたこと

2022年12月13日(火)


今シーズン限りで現役を引退した駒野友一は、23年に及ぶプロ生活のうち、最後の4年間をFC今治で過ごした。2000年、ユースからトップチームに昇格したサンフレッチェ広島を皮切りに、ジュビロ磐田、FC東京、アビスパ福岡を経て、今治に加入した2019年。当時はJFLだったチームの一員として、元日本代表DFは意識的に振る舞いを変えたという。

「それまでは、若手にアドバイスをすることは、そんなになかったんですよ。言葉よりもプレーや背中で見せるという感じでした」

だが、今治では事情が異なった。才能や可能性のある若手がいるものの、ただ見てもらうだけでは足りないと感じたのだ。

「きつい言い方になるけれど、当時の今治に来るのはJクラブからすれば、ファーストチョイスではない選手たちでした。だから、飛び抜けた何かの武器をすでに持っていることはほとんどなくて。

そんな彼らにプレーのアドバイスをしたり、聞かれたら自分の日本代表での経験を話すことが、だんだん増えていきました。せっかく一緒にサッカーをするのであれば、やっぱり彼らにもJリーグの世界を見てもらいたいですからね。何ならワタルのように、個人で上のカテゴリーにステップアップすることだってある」

“ワタル”とは今シーズン、J3の今治からJ1のサガン鳥栖に移籍して、リーグ戦27試合に出場したDF原田亘のことである。このオフには契約満了となったMF島村拓弥が、J2のロアッソ熊本に移籍を果たした。

駒野が加入した19年に、今治は念願のJ3参入を決める。うねるような上昇機運の中に、「若い力が伸びるために、積極的にアドバイスをしていきたい」という駒野の変化も含まれていた。

「今治からオファーをいただいたとき、正直、Jリーグでプレーし続けたい葛藤もありました。でも気づいたんです。今治はJ1、それも頂点を目指しているクラブ。だったら自分の力で一つずつカテゴリーを上げていけばいいじゃないか、と」

今季、チームは5位でフィニッシュ。3年目のJ3で過去最高の順位だ。いわきFCとともにJ2に昇格する2位・藤枝MYFCとの勝点差は7だった。

J2にはわずかに届かなかった。だが、新しい世界の間近に今治は迫っている。「自分の経験を教えたり、何か話すことが、少しはチームのためになったのかな」という駒野の思いも受け継いで、後輩たちは2023年のチャレンジに乗り出すことになる。

Reported by 大中祐二