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【取材ノート:神戸】欧州のサッカー文化を日本でも。槙野劇場の第二章に期待したい

2022年12月29日(木)
プロ生活17年間を通して、日本サッカー界を盛り上げてきた“お祭り男”槙野智章がユニホームを脱いだ。12月26日にノエビアスタジアム神戸での記者会見は「現役引退および槙野劇場第二章 開幕宣言会見」という変わったネーミングで行われ、槙野自らが自身の今後をプレゼンするというユニークな展開となった。


FIFAワールドカップカタール2022で報道に関わって感じたメディアの重要性、自身がこれから監督をめざすこと。とめどなく溢れ出る熱い言葉は、彼がこれからも日本サッカー界に貢献することを予感させるものだった。

その中で最も印象に残ったのは「日本にサッカー文化を」というキーワードである。2022年シーズン開幕前に話を聞いた際にも、彼はこのテーマについて話してくれた。根底にある想いが一貫している証拠だろう。12月26日の模様は他のメディアに委ねるとして、ここでは2022年シーズン開幕前に語った「日本にサッカー文化を残したい」理由を蔵出ししておきたい。

Q:槙野選手は以前から「日本にサッカーを文化として残したい」と発言されていますが、この考えはどこから生まれたのでしょうか。

槙野:「2014年からドイツ(1.FCケルン)でプレーして日本に帰ってきました。向こうでヨーロッパのサッカー文化を目の当たりにした時に、日本にもこういう流れや習慣があったらもっと盛り上がるだろうなと思いました。

日本でも場所によっては、あるいはチームによってはヨーロッパのような環境が整っているとは思います。けれど、国内の状況を見た時にスポーツニュースでもプロ野球がやっぱり多いですし、自国のJリーグのニュースが抑えられて代表選手のニュースが優先されます。その状況に対しては寂しい思いもありました。

ドイツでは、週末には街から人がいなくなってみんながスタジアムに行くような流れがありました。プラベートでも自分の応援するチームや選手のユニホームを着て遊ぶ姿が日常的にあって、当たり前のように地元クラブのニュースがテレビで放映されていました。そういう環境が日本にもあったらいいなと思いました。

Jリーグには素晴らしい選手たちがいるということを考えると、少しでも多くの方たちに興味を持ってもらえるような発言や行動をしていかないといけないと思っています。神戸の街にも、もっとヴィッセルカラーがあれば盛り上がるだろうなと思いますし、ピッチの中だけではなく、いろんな人を巻き込んで盛り上げていきたいですね」

FIFAワールドカップカタール2022の開幕前に、何かのテレビ番組でスペインのレアル・ソシエダの熱狂的なサポーターがインタビューを受けている場面があった。その年配女性は、スペインvs日本についてどっちを応援しますかと聞かれ、「もちろん、タケよ」と答えていた。インタビュアーは「もちろん、スペインよ」という答えがほしかったのかもしれない。でも彼女はレアル・ソシエダ所属の久保建英と答えたのである。

槙野智章が日本に定着させたいサッカー文化がどんなものかはまだ手探りの部分も多いだろう。ただ、12月26日の会見で彼から「日本にサッカー文化を」というワードが飛び出した時に思い出したのは、レアル・ソシエダのおばちゃんサポーターだった。おらが街のクラブで老若男女がつながっているコミュニティが、日本各地にたくさんできたら楽しいだろうなと思う。「槙野劇場 第二章」に注目していきたい。

Reported by 白井邦彦