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【取材ノート:福岡】縦横無尽に疾走する「信用できる男」。湯澤聖人の強い覚悟

2023年3月7日(火)


第2節に続き、試合終了間際に劇的な決勝ゴールを挙げてアビスパ福岡は柏レイソルを1‐0で下し、明治安田J1リーグでクラブ初となるホーム開幕2連勝を飾った。殊勲者はFWのルキアン。最後まで諦めることなく、この日チームNo.1となる24回のスプリントを繰り返し、相手GKのミスを見逃さず冷静にゴールに流し込んだ。ただ、そのルキアンと同じく90分間走り続け、パスという形で想いを託したのはこの日チーム№1の走行距離を記録した湯澤聖人だった。

「ルキアンのスピードはすごくストロングですし、柏はすごく前から来るチームなので、簡単にひっくり返して、相手のミスも絡んで上手くいったという感じでした。全体的な考え方のところで、今日はそういうところを上手く出せたかなと思います」


スタートポジションは開幕から3試合続けて右WB。持ち前の対人の強さで相手のアタッカーを抑え、豊富な運動量を活かしながら推進力を持ってピッチを縦横無尽に走り続けた。それは試合途中で左WBに変わっても同じ。

「(先発で左WBに入っていた小田)逸稀もすごく良いプレーをしていたので、その中で代わった僕がやられるわけにはいかないなという気持ちもありましたし、監督からの指示が具体的に何かあったと言ったらそうではないんですけど、そもそもマテウス サビィオ選手がいて、そこに僕をぶつけるというところで、意味はだいたい汲み取れました。あの時(右サイドから左サイドに移った時)は0‐0だったので、守りながら前に出ていくというところを意識して僕を左にしたのかなと思ったので、そこは言葉を交わさなくてもプレーできました」と話すように後輩の頑張りを力に湯澤は長谷部茂利監督から与えられた役割を最後まで全うした。

例えどんなポジションであっても、全力で走り続け、球際のバトルに負けない。泥臭くチームの為にひたむきに戦い続ける選手が揃う福岡の中でも一際目立つのが湯澤。そんな姿を見ていつしかサポーターは「信用できる男」と呼ぶようになった。

昨シーズン終盤、J1残留争いに苦しむチームを2試合連続アシストで救い、その良い流れのまま今シーズンに入っても開幕から3試合続けて攻守において高いパフォーマンスを発揮する湯澤への信用は増すばかりだ。本人にその要因を尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「まずは相手を分析して、どういうことが起きるのかということを自分で考えることですね。今まではミスが起きた時にまたミスを続けたり、何でもないミスでも精神的に少し落ちることがあったんですけれど、試合の中で分析ができているからこそ、ミスがどういうものかというのも分かるし、その次のプレーに今のミスは関係ないということを自分の中で考えるようにしてミスを引きずらないようにしながらプレーしています。あとは自分の体力的なところと相手とのバランスを見てうところでは休んだりとかできるようにはしています。去年は多く試合に絡ませてもらって、アビスパが上に行くためには試合に出ている選手のレベルアップが絶対必要だと思っていましたし、僕自身も自分の力の無さを感じていました。その中で去年のシーズン途中から、アビスパが上を目指すんだったら僕もACLとかに出たいと思っていたし、タイトルを目指すのであれば自分のレベルをふさわしいレベルに引き上げないといけないと思っていたので、そこに向けて少しずつ良くしていければいいと思います」

より高みを目指して邁進する湯澤。強い覚悟を持った男が福岡の好調を支えている。

Reported by 武丸善章