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【取材ノート:今治】「おかえり、ラルフ!」里山が幸せに包まれた朝

2023年4月28日(金)

昨季第31節の富山戦でゴールを決めたマルクス ヴィニシウス(写真中)は、リストバンドに記していた「RALF」の文字を中継カメラに向けて突き出した。オランダで映像を見て驚いたというラルフ。「もともと親友だったけれど、以来、ヴィニは大親友だ」
その朝、オランダ人FWラルフ セウントイェンスは、およそ1年ぶりにありがとうサービス夢.スタジアムのピッチを踏みしめた。4月28日、午前9時半から始まるトレーニングに、ラルフは選手たちの最後に姿を現した。

昨年までのホームスタジアムだった夢スタは、隣接して今治里山スタジアムが完成した今年、日々のトレーニング場として活用されている。木々に囲まれ、まさに里山のような緑豊かな環境で、うぐいすの美しい鳴き声がピッチに響き渡る。別メニューでランニングするラルフを、見学に訪れたサポーターの温かい拍手が包んだ。

悪性リンパ腫のためにチームを離れ、母国で治療をスタートさせたのは、昨年5月のことだ。化学療法による治療が効果を上げ、今年1月に寛解。手術を伴わなかったことも、より早い今治での再会につながった。

昨季はヘッドコーチとして共に戦った髙木理己監督も、その復帰を心から喜ぶ。「シュート一つ取ってもインパクトの技術が高く、本物の技術を持った選手。ペナルティー・ボックス内でのプレーの質がすばらしいし、そこはまだまだ我々に足りないところ。こうして再会できて、サッカー的なことだけではなく、人間としても多くのことを教えてくれる。本当に大切な選手が戻ってきてくれたし、非常に良い“補強”になる」。

ラルフ自身は、「体の状態はとてもいい。ただし、試合に出て万全のプレーができるまでには、もうしばらく時間が必要」と、完全復活までの道のりを冷静に見据えている。大病を経験して、サッカー、そして人生に対する考え方は、どう変わったのだろうか?

「命、人生がどれだけ大切なのか、よく分かりました。これまで以上に奥さんと2人の子どものことを考えるようにもなりました。そして、またサッカーができることが本当にうれしい。あと数週間するとオランダから今治に家族が来るので、いろいろ新たなアドベンチャーをしたいですね」

不屈のストライカーが里山スタジアムでゴールを決めて、大歓声と万雷の拍手を浴びる瞬間の訪れを楽しみに待ちたい。

Reported by 大中祐二