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【取材ノート:長野】長野がオレンジに染まった日。小さなミラクルを積み重ねて

2023年5月16日(火)


「『ALL NAGANO』でつかんだ歴史的勝利だと思う」。シュタルフ悠紀監督は試合後の記者会見で、開口一番にそう声を弾ませた。

AC長野パルセイロは明治安田生命J3リーグ第10節、松本山雅FCとの信州ダービーをホームで迎え、2-1と勝利。スコアだけを見れば“辛勝”と捉えられるかもしれないが、内容としては“完勝”に終わった。序盤から攻守に圧倒的なパフォーマンスを示し、前後半で1点ずつを挙げる。終盤にミスから1失点こそ許したが、「5点、6点離れてもおかしくないゲームだった」(シュタルフ監督)。


試合もさることながら、ピッチ外での努力も身を結んだ。これまでのホームゲームではマイクロバスに乗って移動していたが、この日は大型ラッピングバスが初お披露目。バス待ちをしていたサポーターは歓喜に沸き、製作した株式会社アリーナに向けてコールを送った。


長野Uスタジアムには今季最多となる12,458人の観客が駆けつけた。昨季の13,244人には及ばなかったが、89名のボランティアとスタッフが力を合わせ、スムーズな運営に励む。集まったサポーターはハリセンやフラッグを使って選手を後押しし、スタンドの三方がオレンジに染まった。

オレンジのジャケットを羽織った指揮官は、終盤に応援が静まったタイミングで観客席を煽る。会場のボルテージは最高潮に達し、Jリーグ屈指の応援を誇る松本に対しても引けを取らなかった。

「この試合に勝つために、一人ひとりの関わってくれた人が『自分に何ができるのか』と主体的に考えて、アクションを起こしてくれる姿を目にした」。そうシュタルフ監督が言えば、キャプテンの秋山拓也も「選手・スタッフだけではなくて、パルセイロに関わる全ての人たちがONE TEAMとなって戦えている」と話す。東京ヴェルディから育成型期限付き移籍で加入し、「僕は本物の緑を知っている」と松本に挑戦状を叩きつけていた佐古真礼も、「今日は長野がオレンジに染まった」と誇らしげだった。

長野は松本戦の結果を受けて、第7節以来の首位に返り咲いた。Jリーグでの信州ダービーの勝利と、1シーズンで2回首位に立つのは、いずれもクラブ史上初。今後も『ONE TEAM』となって小さなミラクルを積み重ね、J3優勝という大きなミラクルに向かっていく。

Reported by 田中紘夢