4月から1勝8敗、その過程で2度の4連敗。順位も7節終了時の7位から16位まで下がってしまった。まさに苦境と言える状況だが、藤枝はこうした苦しい時期を毎年乗り越えてきた。たとえば直近3年間でも、さまざまな要因で浮き沈みがあった。
2023年(J2初年度)は、持ち前の超攻撃的サッカーで見事なスタートダッシュを見せたが、対戦相手に徐々に研究され、渡邉りょうと久保藤次郎がJ1に引き抜かれた影響もあって、7月から8戦勝ちなしと低迷。33節終了時点で17位と降格の可能性も見え始めた。そこから現実路線も取り入れて34節・熊本戦に2-0で勝ってから持ち直し、最終的には12位。J3から2位で昇格したチームとして初めて1年目の残留を決めた。
2024年(昨年)は、10番の横山暁之が千葉に移籍した影響もあって前年とは対照的にスタートダッシュに失敗し、開幕から4戦得点なし。その後も波に乗れず、11節まで2勝2分7敗で降格圏内の19位まで落ちた。だが、12節・水戸戦から4連勝と盛り返し、一桁順位には上がれなかったが13位で2年連続の残留を決めた。
こうして苦しい時期から毎年力強く持ち直してきた背景には、ひとつ共通点がある。勝てなくても自分たちのサッカーを信じてブレずにやり続けてきたことだ。
2023年には、ハイプレス一辺倒ではなく、ミドルブロックで構える守備を取り入れたが、それは基本路線を変えたわけではなく、戦い方の引き出しを増やすという形だった。
「過去と比べても、すごくレベルが高くなってきてるなと思います。オン(ザ・ボール)の部分も、オフでのハイプレスの連動性といったところも、できているときはすごく良い。ただ、それができなかったときに脆さが出るというところは、まだ足りないのかなと。ただ、仙台戦での反省が効いて、守備の戻す速さ、ボールへのアプローチというところもできてきていると思います。過去にもこうして一つ一つ(課題を)潰しながら成長してこられたし、戦い方は変えないけど少しずつスパイスを変えながらやり続けていくしかないと思っています」
そんな中で現在の最大の課題となっているのは、点を取るという面だ。
「今いちばん足りないところは、攻撃でのゴール前の迫力という部分。点が取れる場所というのはあるけど、そこに人がいない。ボールが来ないかもしれないけど、信じてそこに入って行くこと。少しでも『来ないかも』と躊躇すると、相手の前に入れない、一歩届かなくてボールが前を抜けていく。だから、何度でもあきらめずに入り続けることが大事だと思います」(須藤監督)
今季のJ2は「過去最高レベル」という声が多い中、ゴール前の攻防もレベルが上がり、藤枝もひとつ壁にぶつかっている。そこは日々の練習で質や精度を高めていくしかなく、須藤監督も「両ゴール前の攻防」に重点を置いたメニューを増やし、攻めきる力、守りきる力の強化に努めている。その中でストライカーの千葉寛汰も「(相手より)一歩前に入るところとか飛び込んでいくところを強く意識してます」と前向きに取り組んでいる。
それをやり続けた成果として得点が生まれ始めれば、パスを出す側も信じて出す、入る側も信じて飛び込むという面がより確信を増したものになり、好循環が生まれてくるはずだ。
「試合に勝たなくちゃいけないとか、やばいやばいという気持ちが強くなると、人ってどうしても違うことを考えちゃいますし、個人のプレーに走りがちだと思うんですよ。個人の持ち味を出すというのはもちろん大事ですけど、しっかりまとまってみんなで繋がろうというところが、より大事になってくると思います。今までの経験でも、そこでしっかりまとまれたときには巻き返せていたんですよ。勝ってるときは自然にできることですけど、今はそこをより大事にしなければいけないと感じています」(久富)
キャプテンの中川創も、同様の想いを口にする。
「自分が活躍してチームを勝たせたいという気持ちを持つのは、もちろん選手として大事だと思うんですけど、自分が犠牲になって誰かを生かすという部分は、まだ少し足りないのかなと自分は感じています。それが回り回って自分に返ってくる、泥臭くプレーし続けて、結局最後に自分のところにチャンスボールが転がってくるとか絶対あると思うんですよ。1人1人がチームのために責任を追うということに、もっと取り組まないといけないと思っています」(中川創)
その覚悟を持った選手は多く、前述の通りブレずにやり続けるということは全員で共有できている。それをサポーターが理解し、結果が出なくても支え続けてくれていることも非常に大きいと熱血キャプテンは言う。
「もちろんサポーターの皆さんも、勝てないと怒りたくなる気持ちはあると思いますが、最後は必ず拍手で迎えてくれて、熱い言葉をかけてくれる。サッカーって楽しいよねということを体現するのが僕らの魅力だと思うんですが、それを信じて待ってくれている、後押しを続けてくれている。本当に感謝しかないし、早く勝って一緒に喜びたいと思っています」(中川創)
チームとして着実に力を蓄えているのは間違いなく、そこに結果が伴ってくることを信じて選手たちも懸命に努力を続けている。サポーターも、それを信じてあきらめずに支え続けている。苦境から持ち直すための条件は揃いつつあると言えるだろう。
もちろん、次節の山口戦からV字回復するという保証はないが、監督や自分たちを疑い始めてチームが崩壊していくという悪循環については、まだまだ心配無用だということは保証できる。
Reported by 前島芳雄
苦境を乗り越えて成長につなげてきた過去3年間
J3から昇格した2022年は、13節まで6勝2分5敗と思うように勝ちきれなかったが、その後クラブ史上最多の6連勝。8月には2節続けて天候の影響で試合中止となり、9月に15日間で5試合という連戦があったが、そこを無敗(4勝1分)で乗り切って最終的に2位で終わり、初のJ2昇格をつかんだ。2023年(J2初年度)は、持ち前の超攻撃的サッカーで見事なスタートダッシュを見せたが、対戦相手に徐々に研究され、渡邉りょうと久保藤次郎がJ1に引き抜かれた影響もあって、7月から8戦勝ちなしと低迷。33節終了時点で17位と降格の可能性も見え始めた。そこから現実路線も取り入れて34節・熊本戦に2-0で勝ってから持ち直し、最終的には12位。J3から2位で昇格したチームとして初めて1年目の残留を決めた。
2024年(昨年)は、10番の横山暁之が千葉に移籍した影響もあって前年とは対照的にスタートダッシュに失敗し、開幕から4戦得点なし。その後も波に乗れず、11節まで2勝2分7敗で降格圏内の19位まで落ちた。だが、12節・水戸戦から4連勝と盛り返し、一桁順位には上がれなかったが13位で2年連続の残留を決めた。
こうして苦しい時期から毎年力強く持ち直してきた背景には、ひとつ共通点がある。勝てなくても自分たちのサッカーを信じてブレずにやり続けてきたことだ。
2023年には、ハイプレス一辺倒ではなく、ミドルブロックで構える守備を取り入れたが、それは基本路線を変えたわけではなく、戦い方の引き出しを増やすという形だった。
ゴールを決めきる力をつけるために
そうした過去の経験があるからこそ、今も「ブレずにやり続ける」ということが、須藤大輔監督をはじめチーム全体のキーワードになっている。実際、自分たちのサッカーがやれていないわけではなく、ゴールに近づくこともできている。現在の状況について、昨年までと比べて須藤監督は次のように分析する。「過去と比べても、すごくレベルが高くなってきてるなと思います。オン(ザ・ボール)の部分も、オフでのハイプレスの連動性といったところも、できているときはすごく良い。ただ、それができなかったときに脆さが出るというところは、まだ足りないのかなと。ただ、仙台戦での反省が効いて、守備の戻す速さ、ボールへのアプローチというところもできてきていると思います。過去にもこうして一つ一つ(課題を)潰しながら成長してこられたし、戦い方は変えないけど少しずつスパイスを変えながらやり続けていくしかないと思っています」
そんな中で現在の最大の課題となっているのは、点を取るという面だ。
「今いちばん足りないところは、攻撃でのゴール前の迫力という部分。点が取れる場所というのはあるけど、そこに人がいない。ボールが来ないかもしれないけど、信じてそこに入って行くこと。少しでも『来ないかも』と躊躇すると、相手の前に入れない、一歩届かなくてボールが前を抜けていく。だから、何度でもあきらめずに入り続けることが大事だと思います」(須藤監督)
今季のJ2は「過去最高レベル」という声が多い中、ゴール前の攻防もレベルが上がり、藤枝もひとつ壁にぶつかっている。そこは日々の練習で質や精度を高めていくしかなく、須藤監督も「両ゴール前の攻防」に重点を置いたメニューを増やし、攻めきる力、守りきる力の強化に努めている。その中でストライカーの千葉寛汰も「(相手より)一歩前に入るところとか飛び込んでいくところを強く意識してます」と前向きに取り組んでいる。
それをやり続けた成果として得点が生まれ始めれば、パスを出す側も信じて出す、入る側も信じて飛び込むという面がより確信を増したものになり、好循環が生まれてくるはずだ。
選手もサポーターも藤枝の力を信じて
これまでも多くの苦境と立て直しを経験してきた藤枝在籍8年目の久富良輔は、それを踏まえて次のように語る。「試合に勝たなくちゃいけないとか、やばいやばいという気持ちが強くなると、人ってどうしても違うことを考えちゃいますし、個人のプレーに走りがちだと思うんですよ。個人の持ち味を出すというのはもちろん大事ですけど、しっかりまとまってみんなで繋がろうというところが、より大事になってくると思います。今までの経験でも、そこでしっかりまとまれたときには巻き返せていたんですよ。勝ってるときは自然にできることですけど、今はそこをより大事にしなければいけないと感じています」(久富)
キャプテンの中川創も、同様の想いを口にする。
「自分が活躍してチームを勝たせたいという気持ちを持つのは、もちろん選手として大事だと思うんですけど、自分が犠牲になって誰かを生かすという部分は、まだ少し足りないのかなと自分は感じています。それが回り回って自分に返ってくる、泥臭くプレーし続けて、結局最後に自分のところにチャンスボールが転がってくるとか絶対あると思うんですよ。1人1人がチームのために責任を追うということに、もっと取り組まないといけないと思っています」(中川創)
その覚悟を持った選手は多く、前述の通りブレずにやり続けるということは全員で共有できている。それをサポーターが理解し、結果が出なくても支え続けてくれていることも非常に大きいと熱血キャプテンは言う。
「もちろんサポーターの皆さんも、勝てないと怒りたくなる気持ちはあると思いますが、最後は必ず拍手で迎えてくれて、熱い言葉をかけてくれる。サッカーって楽しいよねということを体現するのが僕らの魅力だと思うんですが、それを信じて待ってくれている、後押しを続けてくれている。本当に感謝しかないし、早く勝って一緒に喜びたいと思っています」(中川創)
チームとして着実に力を蓄えているのは間違いなく、そこに結果が伴ってくることを信じて選手たちも懸命に努力を続けている。サポーターも、それを信じてあきらめずに支え続けている。苦境から持ち直すための条件は揃いつつあると言えるだろう。
もちろん、次節の山口戦からV字回復するという保証はないが、監督や自分たちを疑い始めてチームが崩壊していくという悪循環については、まだまだ心配無用だということは保証できる。
Reported by 前島芳雄