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【取材ノート:大宮】学生相手に屈辱の敗戦。福井啓太は母校との対戦を次へのステップにできるのか

2025年5月29日(木)


おそらく、ピッチ上の誰よりもこの試合に向けて気持ちを高ぶらせていたであろう。ここまでリーグ戦でのプレー時間が0分である福井啓太にとっては、自身の存在をアピールする絶好の機会。そして、その相手が昨年まで在籍していた母校である。それだけに、試合終了の瞬間は落胆の色がより大きかったように見えた。

天皇杯 JFA 第105回全日本サッカー選手権大会1回戦、RB大宮アルディージャは筑波大学との対戦となった。言わずと知れた大学サッカー界の強豪であり、この天皇杯でも過去に何度もJクラブを食っている戦果を持つ、プロクラブとしては実にやりづらい相手である。

さらに福井にとっては、自分のことを相手にすべて分かられている。その上で、先輩としての威厳、プロとしての成長を見せなければいけないという、なかなか面倒なミッションでもあった。

「去年まで一緒にやっていた選手が多く、やっぱり相手にすると嫌だなと感じました。やりづらさはもちろんありました」



3バックの右センターバックとして試合に入ったが、「後ろの5枚でなかなか前にプレッシャーにいけなかったので、相手は自分たちがやりたいようにサッカーができてしまっていた」と序盤を振り返る。

25分で4-4-2へのシステム変更。「大学の時に何回か」程度の経験である右サイドバックへのポジションチェンジで、難しさはあったかもしれない。右サイドで縦関係になった中野克哉は「お互い探り探りだし、試合中に話してはいましたけど、もっと細かいところをうまくやれれば良かったかな」とルーキーを思いやる。29分には右サイドからオリオラ サンデーとのコンビネーションで切り込みながら、左足でシュートを放つ場面も見せたが、筑波大の小井土正亮監督には「サイドバックのお前は怖くない」とも言われたそう。やはり本来の自分で戦いたい、本来の自分を見てほしかったという思いはあったであろう。

試合後には、筑波大のゴール裏応援席からコールもされた。

「あれは響きましたね。悔しさもあったし懐かしさもあったし、いろんな感情で、ちょっと込み上げてきてしまって…でも、嬉しかったですね。今後プロの世界で活躍して、みんなにいい結果を背中で示したいと思います」



そのためには、チーム内での競争に勝っていかなければならない。これでカップ戦はすべて敗退、いわゆる“Bチーム組”にとって、出場機会を巡る争いはよりし烈になる。

「現状、自分はリーグ戦に1試合も出られていないという事実があるので、自分自身に鞭を打って、スタメン組に食ってかかっていけるように、練習や練習試合すべてに全力を懸けてやっていきたいと思います」

この試合を、母校がくれた好機とできるかどうか。今後の自身のプレーに懸かっている。

Reported by 土地将靖