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【取材ノート:福岡】「出続けて何より結果を残すこと」。期待のルーキー橋本悠が福岡に息吹をもたらす

2025年6月3日(火)


橋本悠の存在感が日に日に大きくなっている。

明治安田J1リーグ第19節・東京ヴェルディ戦で後半開始から右WBとしてピッチに立った背番号47。スコアレスの状況を動かそうと前半はベンチで見ながらこんなことを考えていた。

「前半は、左サイドの方はよく相手コートに攻撃しに行く回数は多かったという印象で、決め切れなかったですけど、惜しいシーンまでは行っていたので、(後半)僕が入る時に(金明輝)監督から右側ももっと攻撃を活性化させられるように紺ちゃん(紺野和也)とコミュニケーションをとりながら相手の懐のほうにボールを供給していくようにと指示があったので、そういったものも含めて(岩崎)悠人くんの動き出しだったりとかを後半始まる前に僕は意識して良い入りができたので、スムーズに試合に入ることができたと思います」

見せ場は早速訪れる。49分、右サイドのFK。橋本は右足で高精度のボールをゴール前に送り込む。合わせたのは上島拓巳。ゴールネットを揺らし、ベスト電器スタジアムの福岡サポーターは歓喜に沸いたが、結果はオフサイド。得点は認められなかった。


「あれはチームの戦術の一つだったので、セットプレーをやる前に大体選手数人と話してそれをいろんな選手に伝えていってもらってやると決めていたことなので、感触も良かったですし、オフサイドになってしまって悔しいです」

美しいフォームから様々な球種を蹴り分け、質の高いクロスやプレースキックでチャンスを作り出し、自らもゴールを狙う。見ていて惚れ惚れするキックの持ち主は、積極的に攻撃に関わるだけでなく、東京V戦の71分に自陣深くで粘り強くボールを奪ったシーンが象徴するように守備でも奮闘を見せている。

昨シーズンは福岡大学在学中に特別指定選手としてYBCルヴァンカップ2回戦の松本戦に出場し、アシストを記録。今シーズン、期待のルーキーとしてプロ選手の歩みを始めた。ここまでリーグ戦は途中出場を中心に9試合、ルヴァンカップは全3試合に先発出場し、試合を重ねるたびに自信を高めながらプレーしている。


「(リーグ戦)前期折り返しなので遅いと思うんですけど、慣れてきた分、自分の良さを存分に出すこともできましたし、チームメイトとの信頼も徐々に増えてきているのもあって、より自分が(プレー)しやすいような動きをいろんな先輩方たちはやってくれるので、そういったものも含めてちょっと心の余裕だったり、J1ですけど、プレー強度にも慣れてきて、なんか支えてもらっているというだけじゃなくて、自分もチームの主となってやっていると自覚できているので、そういったのを含めて良いプレーが連続でできているんじゃないかなと思います。多くの選手は数字を残したらそこから乗っていけるような感じだと思うんですけど、僕はまだ数字というものは残してなくて、でも先日(C大阪戦)の(クロスバー直撃の)FKだったり、練習中の取り組みで自信がついていって、練習の中でも良いクロスだったり、セットプレーもそうですけど、前に運べるところだったり、そういうのができているので、そういったものもありながら先輩たちの関わりもあって、徐々にできているなというふうに変わりました」

同じポジションには湯澤聖人や前嶋洋太らこれまでJ1で実績を残してきた選手たちがいる。そういった先輩たちとどのように向き合いながら成長しようとしているのか自身の考えを教えてくれた。

「先輩たちと比べるわけではなくて、僕自身の特長を出すことができれば自ずとチャンスは増えると思いましたし、自分の弱みというところだけを他人と比べながら先輩たちがどういう取り組みをしているのかというのを個人的に考えて、守備に対するトレーニングだったりをしていたので、先輩たちにもそれぞれ良さがあって(試合に)出ているわけなので、その良さを真似するというわけではなくて、それはそれで僕なりの特長というか、色を出せたらまた違うサッカーを生み出せると思うので、刺激にはもちろんなりますけど、とりあえず自分ができていることとできないことを見極めてやっているので、自ずとチャンスは回ってくるかなと思います」

ピッチ上で見せる気迫あふれる姿とは対照的にサッカーに対して冷静に自らを客観視しながら取り組む橋本が、シーズン前に掲げた目標は2ゴール、7アシスト。その為にはリーグ戦での先発を増やしていく必要がある。

「僕自身まだホームのリーグ戦でスタメンがないので、まずはそこを目標にしながらスタメンに定着するのを目標にするんじゃなくて、出続けて何より結果を残すことが自ずとその先のスタメン定着につながっていくと思うので、そういったものにこだわりながらやっていきたいと思います」

結果を残すために自分の武器をどう活かすべきか。日々、自身を見つめながら強い野心を持って攻守両面で更なるレベルアップを図る22歳の若き勇者は、リーグ戦9試合勝ちなしと苦境に立つ今の福岡に息吹をもたらそうとしている。

Reported by 武丸善章