
ピッチに立つのが途中からであっても、彼の中でスイッチは常にONだ。
8日の明治安田J3リーグ第15節・八戸戦(0-1●)。後半から途中出場の茂木駿佑は後半39分、左サイドからの鋭いクロスでチャンスを演出する。ゴールこそ生まれなかったものの、その一連のプレーには彼の意志とプライドが凝縮されていた。
「1点差で負けている状況だったので、自分がどんどんゴールに向かってプレーすることを意識しました」。
そう語る茂木は、平川忠亮監督の「取りに行け」という指示を受けてピッチへ。その言葉通り、ボールを持つと迷わずゴールを目指し、スペースがあればミドルレンジからも狙う構えを見せた。そして琉球が自陣でボールを奪ったあと、彼は魅せる。
中央で楔のパスを受けた藤春廣輝が左へ展開すると、内側にポジショニングしていた茂木が一気にサイドへ流れて、マーカーの視界から消えるような動きでフリーに。藤春とのアイコンタクトを交わしたあと、タイミングよくスペースへ飛び出し、パスを引き出した。
そして、ペナルティエリア左手前からゴール前へ、茂木は迷いなくクロスを選択。ただ放り込むのではなく、相手DFラインとGKの間を狙い、低く滑らせるように送ったボールを富所悠がフリックで落とすと、ボックス中央に走り込んだ岩本翔が反応し、ワンタッチでシュート。GKの脇を抜けたボールはファーサイドへ流れ、さらに平松昇も詰めに走ったが、わずかに届かず。ゴールとはならなかったが惜しいシーンだった。
茂木の持ち味は、裏へのラン、鋭いクロス、そして積極的なシュート。後方での慎重なポゼッションに偏りがちな試合展開の中で、彼の「縦に向かう意識」は貴重だ。シュート数がわずか4本にとどまった八戸戦において、最もゴールに近づいたのは、茂木の左足から放たれた一撃だった。
開幕当初と比べ最近は途中出場の機会が目立つ茂木だが、それでも彼は決して腐らない。「悔しさをプレーで出すだけです」と静かに闘志を燃やし、「連携を深めるためにもっと喋ることも意識している」と、役割の再定義にも前向きだ。
「自分のプレーをしっかり出すことが大事」と語る彼は、チームのテンポに合わせるのではなく、自らがテンポを変える存在となることを選んだ。その意志は後半39分のプレーに如実に表れている。動き出しの鋭さ、パスの要求、そして一瞬の判断で繰り出されたクロス。そのすべてが、試合の流れを変える可能性を秘めていた。
今節の松本戦でも、彼は再び「変化」をもたらす鍵となるだろう。

「足元のうまい選手が多い中で、自分は背後を狙うプレーを繰り返したい。もっとお互いに動きを出していければ、チャンスも増えると思います」。
梅雨が明けたばかりの真夏の沖縄。その灼熱の中で、茂木駿佑は今日もピッチに風を吹かせようとしている。
Reported by 仲本兼進