今年はなかなか結果を出せずに苦しい時期も経験している藤枝MYFCだが、その中でもチームとしての進化は続いており、それは試合内容にも表われている。個人としても、この連載で紹介した浅倉廉やシマブクカズヨシなど成長著しい選手が目立つが、それは攻撃陣に限った話ではない。
今季から初めてキャプテンを任されたセンターバック・中川創も、非常にパフォーマンスを高めている選手の1人だ。
柏ユース出身で元々能力の高い選手だが、以前はミスや粗さが少し目立つ面もあった。だが、今季はそのミスが減って安定感が格段に増している。守備面では、とくに空中戦の強さやクロス対応が際立ち、ゴール前の危ない場面を止めるシーンも目立っている。攻撃でも不用意なボールロストが減って、確実にパスをつないでビルドアップに貢献している。
その働きぶりは、個人スタッツにもよく表われている。空中戦勝利数がJ2で4位(DFでは2位)で、プレー総数は19位、パス総数22位、クリア総数6位(以上は全てチーム1位)。それほどボールに関わる機会が多い中で、パス成功率は80.9%と高く、ファウル数は200位以内に入っていない。
そうした安定感が須藤大輔監督の絶大な信頼にもつながり、ここまでフィールドプレーヤーではチームで唯一のフルタイム出場を続けている。
「去年からチームが良くなるために言うべきことは言うようにしてましたが、あらためてキャプテンという立場になって、自分が嫌われる怖さがなくなったというか。ぬるいところをぬるいままにしていたらダメということを、より明確に伝えなきゃという意識が自分の中で強くなって、そこで人にどう思われるかなとか恐れずに言えるようになったことは、一つ殻を破れたなと感じています」
「ただ、言うからには自分が率先してやらなきゃいけないというのが大前提で、毎日の練習を緩みなく全力で取り組むということは自分の中でできてると思います。まだシンプルなミスをしてしまうこともあるけど、その回数も減ったと思います。監督は『100分間アラート』とよく言いますけど、それを練習からつねに意識して、試合中に体力がキツくなってきた中でも最後の最後で踏ん張れるようになってきたというか、そこは意識で持たせてる部分もあると思います」
須藤監督もキャプテンを任せるにあたって、彼に厳しい要求を課した。
「他人のミスでも自分のミスとしてやってもらいたいと創には言いました。例えば創のパスはOKなんだけど、動きの共有ができてなくてミスになった。それは受ける側が悪いのかもしれないけど、それすらも自分のせいにしてくれと。それぐらいお前を信頼してるよということは伝えています。彼は本当に責任感を持って、個人よりもチームのことを考えてプレーしているし、言動もそうだし、そういう選手が言葉で引っ張っていくことが、どれだけチームに勇気を与えるか。彼自身プレーの面でも攻守両面において成長してるし、キャプテンマークがすごく似合うようになってきたと思います」(須藤監督)
それほど強い責任を与えても、押しつぶされるのではなく意気に感じて強気に取り組むことができる。中川創がそうした心の強さを持つ男だと信じているからこそ、指揮官はキャプテンマークを託すことができた。
練習のウォームアップから責任感と緊張感を高いレベルで保ち続け、細かいプレーまでこだわってミスを減らし、緩みや隙をなくしていく。「つねに自分にプレッシャーをかけながらやるのか、何も考えずにやるのかで本当に全然違う。それを毎日やれている選手はすごく成長しますよ」という須藤監督の言葉を、誰よりも実践しているのが、26歳の新キャプテンだ。本番の試合でミスが減っているのも当然の成果だろう。
「大宮戦で自分がマークを外されて点を取られてしまったのはすごく反省してますけど、守備での自分のウィークポイント、身体で当たり負けしてしまうとか、ボールを奪えずに入れ替わってしまうといった部分では、取りこぼしが減ってきたと思います。空中戦の勝利数もそうですけど、守備での強度というのは少しずつ良くなっているのかなと。ビルドアップは、今はカズ(シマブク)がすごいので、彼にシンプルに預けて好きなようにやってもらうのが一番いいと思ってやっています。ただ、判断とか精度はもっと上げていけると思っています」
シマブクとは同い年で、お互いに信頼し合い、切磋琢磨しながら成長できていることは、双方にとって大きなプラスとなっている。
また須藤監督は、往年のバルセロナの名キャプテンと重ね合わせて、中川創のさらなる進化に期待を寄せる。
「だいぶ(カルレス)プジョルっぽくなってきたんじゃないですか。あの髪型にしてからすごくいいし(笑)。プジョルは特別うまい選手じゃないけど本当にハートで戦えるし、まさに闘将。創にもそうなってもらいたいです」
今年に入って彼がアフロヘアに変えたのは、もちろんプジョルを意識したことではない。ワイルド系のプジョルと違って、プライベートではファッションに敏感で、洗練されたスマートさが感じられる好男子だ。だが、ピッチに入ると闘将に変身するというギャップも彼の魅力と言える。
「今は日常の意識の大切さというのをすごく感じています」と語り、それが大きな成長につながることを身をもって証明している藤枝の新キャプテン。「自分ではわからないけど、最近は周りから顔つきが変わったねみたいに言われるんですよ」と少し照れながらも嬉しそうに語る姿は、彼の成長意欲が今後ますます旺盛になっていくことを期待させてくれた。
Reported by 前島芳雄
今季から初めてキャプテンを任されたセンターバック・中川創も、非常にパフォーマンスを高めている選手の1人だ。
柏ユース出身で元々能力の高い選手だが、以前はミスや粗さが少し目立つ面もあった。だが、今季はそのミスが減って安定感が格段に増している。守備面では、とくに空中戦の強さやクロス対応が際立ち、ゴール前の危ない場面を止めるシーンも目立っている。攻撃でも不用意なボールロストが減って、確実にパスをつないでビルドアップに貢献している。
その働きぶりは、個人スタッツにもよく表われている。空中戦勝利数がJ2で4位(DFでは2位)で、プレー総数は19位、パス総数22位、クリア総数6位(以上は全てチーム1位)。それほどボールに関わる機会が多い中で、パス成功率は80.9%と高く、ファウル数は200位以内に入っていない。
そうした安定感が須藤大輔監督の絶大な信頼にもつながり、ここまでフィールドプレーヤーではチームで唯一のフルタイム出場を続けている。
嫌われる恐さを乗り越えるために
そんな中川創で注目したいのは、センターバックとしてもっとも重要な安定感という面で、キャプテン就任が大きなプラスに作用していることだ。その点について本人は次のように語る。「去年からチームが良くなるために言うべきことは言うようにしてましたが、あらためてキャプテンという立場になって、自分が嫌われる怖さがなくなったというか。ぬるいところをぬるいままにしていたらダメということを、より明確に伝えなきゃという意識が自分の中で強くなって、そこで人にどう思われるかなとか恐れずに言えるようになったことは、一つ殻を破れたなと感じています」
「ただ、言うからには自分が率先してやらなきゃいけないというのが大前提で、毎日の練習を緩みなく全力で取り組むということは自分の中でできてると思います。まだシンプルなミスをしてしまうこともあるけど、その回数も減ったと思います。監督は『100分間アラート』とよく言いますけど、それを練習からつねに意識して、試合中に体力がキツくなってきた中でも最後の最後で踏ん張れるようになってきたというか、そこは意識で持たせてる部分もあると思います」
須藤監督もキャプテンを任せるにあたって、彼に厳しい要求を課した。
「他人のミスでも自分のミスとしてやってもらいたいと創には言いました。例えば創のパスはOKなんだけど、動きの共有ができてなくてミスになった。それは受ける側が悪いのかもしれないけど、それすらも自分のせいにしてくれと。それぐらいお前を信頼してるよということは伝えています。彼は本当に責任感を持って、個人よりもチームのことを考えてプレーしているし、言動もそうだし、そういう選手が言葉で引っ張っていくことが、どれだけチームに勇気を与えるか。彼自身プレーの面でも攻守両面において成長してるし、キャプテンマークがすごく似合うようになってきたと思います」(須藤監督)
それほど強い責任を与えても、押しつぶされるのではなく意気に感じて強気に取り組むことができる。中川創がそうした心の強さを持つ男だと信じているからこそ、指揮官はキャプテンマークを託すことができた。
練習のウォームアップから責任感と緊張感を高いレベルで保ち続け、細かいプレーまでこだわってミスを減らし、緩みや隙をなくしていく。「つねに自分にプレッシャーをかけながらやるのか、何も考えずにやるのかで本当に全然違う。それを毎日やれている選手はすごく成長しますよ」という須藤監督の言葉を、誰よりも実践しているのが、26歳の新キャプテンだ。本番の試合でミスが減っているのも当然の成果だろう。
見た目はスマート、ハートは熱く
もちろんプレーの質の面でも、彼自身少なからぬ手応えをつかめている。「大宮戦で自分がマークを外されて点を取られてしまったのはすごく反省してますけど、守備での自分のウィークポイント、身体で当たり負けしてしまうとか、ボールを奪えずに入れ替わってしまうといった部分では、取りこぼしが減ってきたと思います。空中戦の勝利数もそうですけど、守備での強度というのは少しずつ良くなっているのかなと。ビルドアップは、今はカズ(シマブク)がすごいので、彼にシンプルに預けて好きなようにやってもらうのが一番いいと思ってやっています。ただ、判断とか精度はもっと上げていけると思っています」
シマブクとは同い年で、お互いに信頼し合い、切磋琢磨しながら成長できていることは、双方にとって大きなプラスとなっている。
また須藤監督は、往年のバルセロナの名キャプテンと重ね合わせて、中川創のさらなる進化に期待を寄せる。
「だいぶ(カルレス)プジョルっぽくなってきたんじゃないですか。あの髪型にしてからすごくいいし(笑)。プジョルは特別うまい選手じゃないけど本当にハートで戦えるし、まさに闘将。創にもそうなってもらいたいです」
今年に入って彼がアフロヘアに変えたのは、もちろんプジョルを意識したことではない。ワイルド系のプジョルと違って、プライベートではファッションに敏感で、洗練されたスマートさが感じられる好男子だ。だが、ピッチに入ると闘将に変身するというギャップも彼の魅力と言える。
「今は日常の意識の大切さというのをすごく感じています」と語り、それが大きな成長につながることを身をもって証明している藤枝の新キャプテン。「自分ではわからないけど、最近は周りから顔つきが変わったねみたいに言われるんですよ」と少し照れながらも嬉しそうに語る姿は、彼の成長意欲が今後ますます旺盛になっていくことを期待させてくれた。
Reported by 前島芳雄