
14日、琉球はホームで松本に0-3と完敗を喫した。ゴール前での迫力不足と守備の不安定さが露呈する中、最終ラインを支えるセンターバック・鈴木順也の声はチームの現状を真摯に映し出していた。
「やっていることは出せている。ただ、その先が見出しきれていない」。
ポゼッションはできている。ビルドアップも整理されてきた。だが得点に至らない。この出口の見えなさが琉球の苦悩であり、DF陣の視点からも改善の余地が見えてくるポイントでもある。
松本戦の1失点目。GKのロングフィード一本にやられたシーンでは、菊地脩太との連携ミスも重なった。風の影響もある中での競り合い。ディフレクションによって相手にこぼれたボール…それでも鈴木は「もっと準備を早くして触らなければ」と自戒する。
彼が強調したのは準備の精度と、判断の質。その場の瞬間で最良の判断をし、体を張れるかどうか。それが守備者に課された義務だと彼は心得ている。
そして「失点に慣れちゃいけない。もっと全員が嫌がらなければいけない」。
失点することへの危機感を、チーム全体で共有したいという思いがうかがえる。接戦が多く、1つの失点が敗因となる試合が目立つ今シーズン。攻撃は形を作れているが決定力に欠けるなか、失点の重みが非常に大きい。だからこそ守備陣としての声、プレスの統率、局面での集中力。そのすべてを、もう一段高めていきたいと考えている。
鳥取時代にも序盤から勝てない時期を過ごした経験のある男としての苦味がにじむ。今回の琉球での最下位という現実は、それ以上に重くのしかかっているようだった。だが、鈴木順也が不甲斐なさを感じているのは自らのプレーへの向上心と同時に、チーム全体をより良い方向に導きたいという責任感の表れである。ゆえに「個人の強みをもっと出せば、もっと上にいけるチームだ」と語る。チームの可能性を信じているからこその言葉だ。
「1勝すれば変わる。そう思っています」
この言葉に絶望はない。希望がある。戦う気持ちは失っていない。敗戦を通じて、準備と判断の重要性を学び、成長しようとしている。
今節は、勝点1差で追う19位・沼津とのシックスポイントマッチ。まさに勝てば変わる一戦だ。
彼が背中で語る本気が、チームを変える火種となることを願ってやまない。
Reported by 仲本兼進